「英語を自然に訳せない」悩む人に教えたいコツ1つ 翻訳家が教える「一流」と「二流」の決定的差

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ここで、翻訳をより理解するための簡単なヒントを1つご紹介しましょう。

私がまだ翻訳家として駆け出しの頃、英語の一文をそのまま正確に一文ごとの日本語に翻訳するということを心がけていた時期がありました。ですが、翻訳という仕事を続けているなかで、英語の一文を無理やり日本語の一文に翻訳すると、どうしてもわかりづらくなってしまうことに気づいたのです。

型にはまらない言葉選びが「思考センス」を磨く秘訣

それはなぜか? いわゆる「翻訳調」の文章になってしまうからです。英語と日本語の言語構造が違うわけですから、当然といえば当然のことです。

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そこで英語の一文をわかりやすく翻訳するために、2つの文章に分けてみたところ、見事に自然で読みやすい日本語の文章に仕上がったのです。

このように、型にはまることなく的確な言葉を選んで翻訳することが自らの思考センスを磨き、自然で読みやすく伝わりやすい日本語を選択する秘訣になるのです。

ただし、自然な言葉を用いて自由に翻訳することと、自分本位で翻訳することは意味が違います。翻訳で心がけなければいけないのは、原著者が伝えたいことを正確に伝えることです。このことを忘れてはなりません。

原著者の意図が伝わるような日本語訳であれば、逐語訳から離れた翻訳文であっても、問題はないと思います。翻訳書であったとしても、読者にとって、自然でわかりやすい日本語で読めるのが望ましいからです。

竹内 薫 理学博士/サイエンス作家

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たけうち かおる / Kaoru Takeuchi

理学博士。サイエンス作家。YES International School 校長。1960 年東京生まれ。東京大学教養学部、理学部卒業、マギル大学大学院博士課程修了。科学ジャンルで発信を続け、小説、エッセイ、翻訳などを中心に200 冊あまりの著作物を発刊。主な著書に『99.9%は仮説~思い込みで判断しないための考え方』(光文社新書)、『教養バカ 〜わかりやすく説明できる人だけが生き残る』 (SB 新書)、『素数はなぜ人を惹きつけるのか』 ( 朝日新書) など多数。訳書に『WHAT IS LIFE ? 生命とは何か』(ダイヤモンド社)、『超圧縮 地球生物全史』(ダイヤモンド社)がある。

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