綿菓子製造機の移動販売がゲーム全盛期への道築いた--カプコン会長兼CEO 辻本憲三[下]

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 2000年代前半、ゲーム業界はいくつかの大きな再編を経験した。たとえばスクウェアとエニックス。セガとサミー。辻本は、今後ますます寡占化が進むと予想している。「(1タイトルにつき)100億円かけて5年間でというやり方では、これからは遅いやろね。2~3年で100億円使ったタイトルをポンと出して、あとは顧客の反応を見ながらオンラインで更新する、というビジネスに移行していく」。

ビジネスモデルの変化は、所得水準が上がり始めた新興市場での展開にもかかわる話だ。これは産業全体の課題でもあるが、今の新興国では海賊版(違法コピー)が出回り、まともな商売ができる状態ではない。

だが辻本は、そんな環境も面白くて仕方ないらしい。「海賊版は(勝手に)やらせておきなさい、と言っている。海賊版のユーザーは日本や北米と同じレベルで遊んでる。この間商売にはならないけど、ユーザーのレベルだけはどんどん上がっている。つまり、種をまいたらぐぉーっと育つ、そういう環境になってきているわけ」。

低価格のダウンロード課金が主流になったときがカプコンの出番。「だからこそ、中途半端なものを作っていてはダメ。(近い将来)1000億円かけてソフトを作りたい。どんなものができるやろね。楽しみやわ。それが1回当たり100円や200円で(ダウンロード)できるようになったら、もう天井はないに等しい」。思わず笑みがこぼれた。

50年後、100年後のことを毎日考える。「僕は綿菓子機売ってたときから、コンピュータゲームが出たらすごいことになると思ってた」。それから40年、ゲーム業界はハードの全盛期を迎えている。この2~3年は一つの大きな山となる。そしてその先。70代に突入した辻本の胸中で、“焔”はさらに燃え上がる。「僕らの時代はまさにそこからや、そう思ってる」。=敬称略=

つじもと・けんぞう
何度もどん底を見たはずだが、周囲は「苦労話を聞いたことがない」と口をそろえる。そもそも本人に“苦労人”の意識がない。「どんなに下向いたときも、『これは過渡期で次があるで』と思ってた」。現在70歳。人はそのうち100歳まで働くようになる、と予想する。ゲームもワインもゴルフも「やるならとことん」

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(前野裕香 撮影:ヒラオカスタジオ =週刊東洋経済2011年7月9日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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