取材と言えば聞こえはいいが、広大な南カリフォルニアで大谷を見つけなければならないという雲を掴むような難しいミッションだった。
そんな生活が約1週間続き、絶望に打ちひしがれている12月8日、エンゼルスが大谷の入団を発表。入団発表後に「CAA」の事務所前に入る大谷の写真を共同通信社が撮影。スポニチは私含め当時は「CAA」の事務所前に不在だったため、翌日の紙面は共同通信員社撮影の写真が掲載された。
大谷とニアミスだったことも発覚した。
私は、発表前日の7日エンゼルスタジアムの駐車場で大谷の出入りを待っていた。後日、陽が落ちた頃に大谷がエンゼルスタジアムを訪れたという話を耳にした。
私はちょうどそのタイミングで「もう暗くなったし来ないだろう」と、球場を離れていた。なんということだろうか。大谷がエンゼルスタジアムを視察に訪れたことを確認できたとしても、記事として報じられたかは分からないが、悔しい出来事となった。
トラウト選手の結婚式があります
12月9日。エンゼルスの入団会見。
気温31度。太陽が照りつけ、青空が広がった。ファン公開型の屋外入団会見。会見に先立ち着席した当時のビリー・エプラーGMやマイク・ソーシア監督の名前が呼ばれる度に、1000人を超えるファンから地鳴りのような大歓声が沸き起こった。
大音量のアップテンポの曲も鳴り響くなど、震えるほど格好いい演出だった。
そんな中、真っ赤なユニホームに袖を通した大谷は、カリフォルニアの空気を目いっぱい吸い込み、第一声を発した。
「ハイ、マイネーム イズ ショーヘイ オオタニ」。英語で自己紹介した後、こう誓った。「これからエンゼルスの一員としてファンの皆さまとともに優勝を目指したい」。
鳴り止まない大谷コール。さらに「今日、トラウト選手の結婚式がありますので結婚おめでとうございます」と、エ軍が誇るスターにも祝福の言葉を贈り、ファンのハートをわしづかみにした。
7球団に絞った面談でエンゼルスを選んだ。「本当に縁みたいなものを感じた」。面談の席ではトラウトとテレビ電話で話す機会が設けられ、共闘を呼びかけられた。
26歳にしてMVPを2度獲得の現役最強メジャーリーガー。同じ「世界一の選手」を目指す大谷の心は突き動かされた。
地域性やリーグの違いは決め手ではなく「本当に感覚的なもの」とも言った。二刀流のバックアップはもちろん、トラウトを代表とするエ軍の家族的な雰囲気は、どこか日本ハムに近いものがあったのか。
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