東証・大証統合の前途多難《上》「主導権争い」「裁判」「従業員」--統合交渉を阻む高いハードル

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 東証としては、自らが株式を公開し、時価総額を明らかにしたうえで、大証と統合する手法を望んでいるようだ。東証の時価総額は、大証の株価純資産倍率(PBR)や株価収益率(PER)などを参考にすれば、現状では2000億円前後とみられる。大証の時価総額(現在約1000億円強)を上回る公算は大きい。

そのうえで東証が大証に対して株式公開買い付け(TOB)を行うか、株式交換を実施するというシナリオ。形のうえでは、東証が大証を吸収合併する格好となるが、東証が重視する「透明性」は高い。

ただ、この場合、統合後の経営の主導権を東証に握られやすいとして、大証の抵抗も想定される。また、東証の上場スケジュールはまだ明らかになっておらず、「スピード感」を強調する大証側としては受け入れにくい。

6月22日の定例会見で大証の藤倉基晴副社長が指摘したように、取引所が自身で開設する市場に上場する場合、金融庁長官の承認が必要となるが、一般的に、上場から2年以内に具体的な統合計画を持った企業で、統合によって企業の実態が大きく変わるような場合には、上場申請を受け付けないというルールがある。

つまり、東証の上場を統合の前提とすれば、上場後、2年間は統合が不可能ということになる。これでは、大証は「待っていられない」と交渉打ち切りを決断する可能性が高い。

一方、大証側は短期間での基本合意と統合プロセスを志向している。方法としては、すでに上場している大証が、未上場の東証の株式を現金で買い取る形や株式交換を実施する形が想定される。

東証の株主は旧会員を中心とする証券会社107社から成り、大証は市場を通じずに、相対(あいたい)で東証の株主に条件を提示する。上場企業である大証が存続会社となって、東証の上場を待たずに買収するため、比較的早期に統合が可能とみられる。

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