現代人は「ネガティブな感情が湧きやすい」なぜ 湧いてきた感情を「再評価」すると楽になる

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たとえば、あなたが孤独や不安を感じていて、それに苦しんでいるとします。たしかに、人間は群れで社会をつくる生き物なので、はるか昔の時代であれば、群れから外れることや、群れのリーダーから嫌われることは、自分の生命の危機に直結しました。そのため、強い孤独や不安という感情が湧き、私たちに行動を促したわけです。

ですが、いま自分を取り巻くコミュニティーにおいて、そこから離れることが本当にあなたにとって致命的なものなのか、そのリーダーから嫌われることで本当に多くのものを失うのか、あるいはその人は本当にリーダーなのか、あらゆる方向から再評価してみてください。

ここまで紹介してきた「再評価」は、言うが易しで、暮らしの中で実際にやってみようとすると、けっこう難しく感じると思います。それでも、少しずつ慣れていくことで、日々のストレスに対して上手に向き合っていけるようになるはずです。

再評価は「第3の選択肢」を提示してくれる

最後に補足を。

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感情に任せて「闘争か、逃走か」という行動をとってしまいそうなときに、再評価は第3の選択肢を示してくれる有用な手段です。ですが、立ち止まって考え直してみて、「それでもここは怒っていいところだ」と感じたのであれば、そのときはもちろん怒ってください。

再評価は、あなたの正当な怒りを抑え込むためのプロセスではないということを、覚えておいてほしいと思います。

(イラスト:とみだせな)

そう難しく考える必要はありません。要は、「どう捉えるか」ということ。 まずは、自身の感情に気づき、じっと見つめ直し、客観的にモニターしてみることから始まります。ネガティブな感情がわいてきたら、それは再評価のチャンス。そんなふうに捉えてみてください。

内田 舞 小児精神科医、ハーバード大学医学部准教授、マサチューセッツ総合病院小児うつ病センター長

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うちだ まい / Mai Uchida

小児精神科医、ハーバード大学医学部准教授、マサチューセッツ総合病院小児うつ病センター長、3児の母。2007年北海道大学医学部卒業、11年イェール大学精神科研修修了、13年ハーバード大学・マサチューセッツ総合病院小児精神科研修修了。日本の医学部在学中に、米国医師国家試験に合格・研修医として採用され、日本の医学部卒業者として史上最年少の米国臨床医となった。

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