意外と知らない「教育委員会」どんな仕事なのか 学校への支援、民間企業との付き合い方など

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何かを実施するとそれが前例になります。僕の経験を通しての偏見ですが、役所は基本的に前例を作りたがらないように感じます。

しばしば「文書に規定されていないし、前例がないからそれは無理です」という言葉が役所の中で聞かれます。役所は文書主義なので「こういう支援ができます」と文書で規定されていますが、曖昧な部分の判断については前例に委ねられてしまうわけです。

ということは、文書に書かれていることの最大限を読み取ればいいのです。

「学校を支援するために、ここまでやっていいですよ、と読み取れるものについては最大限の支援をしてください。もし、学校を支援するために法的な根拠を踏まえた規定が不十分だとすれば、できないと諦めるのではなく規定そのものを修正する手続きを取ればいいのです」と部下に指示しました。

裁量が利く余地はたくさんあります。法的な整備を含め、時には条例を変えるという大きな調整が必要なこともあるでしょうし、たかだか要綱を変えるだけで支援の幅がぐっと広がるケースもあります。

民間企業との付き合い方

限界があると同時にまだまだやれることはある。僕は教育委員会でできる限りの支援をしたいと考え、実際にその方法を探りました。

一例として、僕が新宿区教育委員会の「学校情報化」担当チーム統括指導主事として取り組んだ支援の仕事についてお話ししたいと思います。

公立学校ICT(情報通信技術)化事業として、ICT環境を整備することは、当時とても大事なテーマでした。

しかし、一方で忙しい教員たちに使い勝手のわからないITを導入することで、さらなる負担を強いることになってしまってはいけない、という心配もありました。

ただ新たなシステムを導入するだけでは、教員が使いこなせないかもしれません。使うための研修も必要になり、時間も労力も割かなくてはなりません。機器を導入しただけではまったく意味がないのですから。授業準備のために都度、時間をかけるようでは教員の負担が増えて本末転倒です。そこで外部企業の協力を得ることにしました。

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