村上ファンド「あおぞら銀行」に触手を伸ばす意図 あっという間に筆頭株主、「あの銀行」と再編も

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シティらによるあおぞら銀株の取得スピードは、コスモ株よりも速い。「投資及び状況に応じて経営陣への助言、重要提案行為を行う」という保有目的も同じだ。だが、あおぞら銀はコスモなど過去の投資先企業とは異なる事情を抱えている。

1つ目が「銀行法」の壁だ。議決権ベースで20%以上の株式を握るには、金融庁の認可が必須だ。50%超なら銀行持ち株会社に移行する必要があり、難易度は一層高まる。アクティビストが20%のハードルを突破できる可能性は低く、株式の買い増しによる経営権の奪取をちらつかせ、会社側に譲歩を迫る戦略は採りづらい。

自己株取得の余力なし

2つ目が出口戦略だ。例えばジャフコグループは2023年2月、自己株取得によってシティなどが保有していた株式約19%の大部分を買い戻した。買い付け価格にプレミアムを付与して株式を手放させる手法は、アクティビストに狙われた事業会社がしばしば用いる。

ところが、あおぞら銀は前述の赤字決算が原因で、自己株を取得できるほどの財務余力に乏しい。2024年3月末の自己資本比率(CET1比率)は6.6%程度となる見込みで、会社側が規律とする7%を下回る。同行は財務基盤の強化を理由に、今2024年3月期の下期配当を無配としており、アクティビストの保有株を高値で買い取る道理も立たない。

買うにも売るにも壁が立ちはだかる、あおぞら銀への投資。それでも、シティらは株価が反発した2月21日以降も市場内で取得を続けており、現在の株価で売却しても大きなサヤは抜けそうにない。

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