ついにイタリアも標的に--円高再燃を招いた欧米の財政・景気不安は長期化を覚悟

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「イタリアは国債発行残高が非常に多く、これまでは国内で約半分を消化、ユーロ圏を合わせると8割以上が消化されており、懸念されるどころかカネが順調に流れ込んでいた。ただ、逆にノーガードで、売りを仕掛けられた時に脆さを露呈した。今後もマーケットのセンチメントが焦点となる」。バークレイズ・キャピタル証券の高橋祥夫・チーフ外債ストラテジストはそう指摘する。

先行きの市場心理を占ううえで注目されるのが、EUによるギリシャの追加支援の行方だ。昨年5月に決まった1100億ユーロの財政支援ではギリシャの債務返済能力改善にはほど遠く、新たな追加支援が協議されているが、EU内での調整がつかず、結論がなかなか出てこない。追加支援策としては、ドイツなどの主張によって民間投資家による負担も盛り込まれる可能性がある。その場合、格付け会社が「デフォルト」と判断し、ギリシャの銀行などに混乱が広がる可能性も指摘される。

「ギリシャは経済成長率がマイナスの中、国債利回りが2ケタという状況では、“破産”を免れないような状態。第2次の財政支援策には、その状態から脱する抜本的な解決策が求められるが、投資家のロールオーバー(投資残高維持)にしろ、ヘアカット(債権の一部カット)にしろ、デフォルトと認定されれば、今度はスペイン、イタリアへ危機が波及する可能性が高まる。欧州中央銀行(ECB)もそれを懸念しており、落としどころを見い出すのは非常に難しい」と、RBS証券東京支店の西岡純子・チーフエコノミストは語る。

問題先送りの対症療法では危機は長期化し、逆に抜本的な外科手術では金融機関をはじめ犠牲者が増え、結果的に公的コストが増すおそれもある。どちらにしても問題は大きいが、現状では、マーケットや実体経済の大混乱を避けつつ、数年タームで問題解決を図る方向に進む公算が大きいように思われる。

政策当事者の対応の巧拙がカギを握っているのは米国、そして日本も同じ。世界経済はまだまだ波乱含みの状況が続きそうだ。
(中村 稔 =東洋経済オンライン)
※写真は本文とは関係ありません。

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