ついにイタリアも標的に--円高再燃を招いた欧米の財政・景気不安は長期化を覚悟

 

 

円相場が一時対ドルで78円台、対ユーロで109円台と4カ月ぶりの高値を付けている。その原因は、雇用統計の悪化など米国の景気減速懸念や財政問題、欧州債務危機のスペイン、イタリアへの波及懸念がある。そして、世界の投資家のリスク回避姿勢が強まるたびに、世界最大の債権国である日本の円が消去法的に買われるという「経験則」が繰り返されている。

米国は財政赤字削減策で議会対立が長期化、経済低成長が長期化する懸念も

米国ではまず財政問題で不透明感が高まっている。米国債の発行上限引き上げを巡って議会内の対立が続いており、8月2日までに解決しなければ、米国は国債を発行できなくなり、債務不履行(デフォルト)に陥る可能性がある。

 「オバマ大統領は7月22日までに決着したいと言っているが、共和党は民主党の財政赤字削減策への批判を強めており、合意のメドが見えない状況にある」(小野亮・みずほ総合研究所主席研究員)。

 格付け会社のスタンダード&プアーズは4月に米国債の格付け見通しを「ネガティブ」へ引き下げたが、ムーディーズも7月中旬に判断を下す見通しにあり、懸念が強まっている。

 一時的にせよ、デフォルトに陥るようなことにでもなれば、米国債の格下げは必至で、金利も急騰する恐れがある。こうしたことがドルの信認低下につながっている。

米国の実体経済についても最近、弱い景気指標が目立つ。特に7月8日に発表された6月分の雇用統計では、非農業部門就業者数が予想を大幅に下回る1万8000人の増加にとどまり、失業率も9.2%と3カ月連続で上昇。12日に米連邦準備制度理事会(FRB)が公表した6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録では、米国の企業が雇用に関して慎重姿勢を崩さず、当面は生産性の向上で対応しようとしている状況が指摘されており、雇用の停滞が長引く可能性も高まっている。

米国の住宅市場についても、先物市場がさらなる下落を示唆するなど、近いうちに大底を打つ期待を持ちにくい。「雇用回復が明確にならないと、住宅の購入も進まず、ストック調整圧力から脱しきれない」(小野氏)。

金融市場では、量的金融緩和第3弾(QE3)の観測も浮上。米国の国債利回りは今月に入って低下基調を強めており、日米金利差の縮小が為替市場のドル売り円買いにつながっている。

今の米国の景気減速は循環的なものではなく、潜在成長率の低下に起因する可能性に言及するFOMCのメンバーもいる。市場では、「年後半に関しても、大方の期待を裏切る形で2%台の成長が継続するリスクが大きい」(白川浩道・クレディ・スイス証券チーフエコノミスト)と、低成長が長期化するとの見方もある。

マーケットが危機を増幅、イタリアが標的に

一方、欧州ではギリシャの債務問題がスペイン、イタリアへ波及し、金融市場の混乱が一段と拡大している。ギリシャ支援に向けたEU内の調整が難航しており、EUがギリシャ国債のデフォルト容認に傾きつつあると英経済紙が報じたことも市場心理を冷やした。

 加えて、金融市場での信認が厚いとされるイタリアのトレモンティ財務相とベルルスコーニ首相との確執が表面化したほか、今月15日に結果が公表される予定の欧州銀行監督機構による欧州銀行ストレステストで、「スペインの6行が不合格」とスペイン紙が報道したことも不安を煽った。

 スペインとイタリアの10年物国債の利回りはともに一時6%を超え、EUと国際通貨基金(IMF)の支援が必要となる「危機ライン」とされる7~8%にかなり近づいている。

今回、特に新たな動きといえるのが、ユーロ圏第3位の経済規模を持つイタリアが、市場の明確な標的になったことだ。イタリアの公的債務残高は約1.8兆ユーロと欧州最大であり、3000億ユーロ強のギリシャとはケタ違いに大きい(スペインの公的債務は6000億ユーロ強)。

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