「脱原発」か「25%減」か 迫られる究極の選択

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 節電は、外出の手控えや自粛ムードと結び付くことで個人消費の低下にもつながる。製造業の海外移転や非製造業の営業時間短縮などに伴う雇用・賃金の減少は、個人消費を一段と押し下げ、悪循環を生む。

それを避けるためにも、今後数年から10年程度先をにらんだ中長期的な視点で、電力の安定供給策を真剣に考えるべきだ。

福島第一原発の事故を機に、風力や太陽光など再生可能エネルギーの注目度が高まり、ブームの様相を呈している。もちろん、再生エネの活用は重要である。

だが、電力安定供給のための方法論として、原発推進か再生エネ活用かという二者択一の考え方は間違っている。再生エネを普及させるには、時間とコストがかかる。現在、国内発電電力量のわずか1%にすぎない再生エネを2ケタにまで増やすには、10~20年の歳月が必要だろう。再生エネを高い固定価格で全量買い取る法案が成立したとしても、電気料金に転嫁され、国民が負担しなければならない。

菅首相が白紙見直しを明言している従来のエネルギー基本計画では、2030年までに原発を14基新増設し、29%(09年度)の原子力の発電構成比を50%にまで高める予定だった。再生エネについても、水力を含めて9%から20%に高め、62%を占める火力を30%に引き下げるとしていた。ただ、「脱原発」を進めれば、原子力の発電構成比はいずれゼロになる。その場合、「(30年時点で)原子力の50%分をすべて自然エネルギーで代替するのは、絶対に無理」(澤昭裕・21世紀政策研究所研究主幹)といえる。

原発に代わる当面の安定的な電源としては、やはり発電所の新増設を含めた火力の拡大に頼るしかない。特にCO2排出量が石炭より約40%も少ない天然ガス火力が最有力だ。

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