ヒット連発「スターツ出版」読者に寄り添う凄み ケータイ小説から20年、今もファンを作れるワケ

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女の子はピンクや赤が好きで、それでだんだん、少しずつ大人になっていくとそれが青くなってくる。恋愛に、切なさとか複雑な感情が加わってくるのが青、という色なんじゃないかと思います。

文庫本
(撮影:梅谷秀司)

――ターゲティングを精緻に行った結果、ある意味で人間の本質がそこに現れているのかもしれないですね。

「モノ」としての書籍の価値を最大限にする

菊地:『すべての恋が終わるとしても ―140字の恋の話―』は、大型の書店に行ったら特設コーナーがあって、この表紙が並んでいます。すると、どこの書店さんもおっしゃるんですが、やはりブルーの表紙が良くて、来店したお客さんがこの前で立ち止まることが多いんですって。思わず手に取ってくれる力を持ってる。

こうした表紙は「エモい」と言われますが、「モノ」として買ったとき、部屋にこの本を飾っておけるわけです。これ、電子書籍だと、同じものを読んでもそんなことは起きない。だからそういう部分でも紙の本の価値を改めて若い人たちが感じてくれている。

本を手に持って話す菊地社長
「紙の本の価値」を語る菊地氏。たしかに、美しい表紙イラストは、紙の本でこそ十二分に味わえるものだろう(撮影:梅谷秀司)

――他のインタビューで「読み終わった後に飾ったり、友達に貸したりすることができる本を目指している」とおっしゃっていましたね。版元からすると「新しく買ってほしい」という言葉が出てきそうですが、そのようにおっしゃるのが、すごく顧客に寄り添っている気がしました。

菊地『恋空』のときがそうでしたから。『恋空』は上巻・下巻の表紙を合わせるとハートになるデザインでした。普通、上巻を買った人は、7割ぐらいしか下巻を買わないといいます。でも、そのときは多くの人がセットで買っていた。2つの表紙をあわせてハートにして部屋に飾るためなんですよ。

さらに『恋空』の場合は、2セットずつ買ってくれる人も多かった。とても感動したのでクラスで回し読みをするんだけど、そうするとボロボロになってしまうので、永久保存版としてもうワンセット、新品を買っていただけたんです。

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