産官学連携

気候変動のメカニズム解明は
世界経済や産業の発展と密接不可分な関係にある

首都大学東京

ゲリラ豪雨はなぜ発生するのか。雷の発生は予測できないか――。
こうした問題の解明にアプローチするのが首都大学東京の気候学研究室の研究者たち。
気候変動は企業活動や日常生活にも大きく影響を与えることから
「産業界との連携をさらに広げていきたい」と語る。

ゲリラ豪雨の発生を事前に察知することはできるのか

地理環境科学域 教授
高橋 日出男

急激に発達した積乱雲がごく狭い範囲に強い雨を降らせる短時間強雨。ゲリラ豪雨とも呼ばれるこの現象は、風の衝突などにより空気が収束することで上昇気流が発生し、積乱雲を形成することで起きる。稠密な気象観測により、収束が強まり始めた数十分後から雨が降り出すことも分かってきた。つまり空気が収束する現象をリアルタイムで観測できれば、ゲリラ豪雨の場所やタイミングをある程度予測できるのではないか。

そう考える首都大学東京大学院都市環境科学研究科地理環境科学域の高橋日出男教授は、ゲリラ豪雨の発生予測を含む都市気候の形成プロセスの研究に取り組んでいる。

雷雨時における風向風速(矢印)の時間変化と降水強度分布(濃い赤ほど強い降水)との関係を基に、強雨事前予測の研究を行う。

「気象学では、数値シミュレーションによって予測する方法が主流です。しかしこの方法では、狭い範囲での短時間強雨を予測するのは現状では難しいのです。そこで過去の事例から閾値を求め、それを超えたら危険という考え方でゲリラ豪雨を予測できないか研究しています。差し迫った現象を予測するには、むしろこういう統計的モデルのほうが適していると考えています」。(左図)

そう語る高橋日出男教授は、集中豪雨により列車運行に大きな影響を受ける鉄道会社との共同研究を10年以上にわたり行っている。降雨による危険を回避するために鉄道会社では沿線に雨量計を設置しているが、その設置間隔の検証や、実際の強雨域の空間的な広がり方などを分析している。このような研究の中から、ゲリラ豪雨が発生しやすいとされる東京北部から埼玉県南東部では、実際に範囲の狭い強雨域が現れやすい傾向にあることなどが分かってきた。

気象データは通常、人の立ち入らない観測露場で測定される。高橋日出男教授は、人のいる生活空間(駅・繁華街など)の気象情報を携帯端末や自動販売機を通じて収集することで、熱中症予測などきめ細かい情報提供が可能になると、新しい視点からの気象観測ネットワークの構築にも取り組みつつある。

アジアでの洪水は産業にどんな影響を及ぼすのか

一方、モンスーンと気候変動メカニズムの解明を専門とする同じく地理環境科学域の松本淳教授は、気候学の意義についてこう語る。「気候は生態系や農業をはじめとする産業、水資源、人々の生活などにさまざまな影響を与えます。気候変動メカニズムの解明は、生態系の維持や産業の発展、あるいは防災などに貢献できるのです。また、気候学は地球温暖化のメカニズムの解明にも重要な役割を果たしています」。

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