韓国・EU間で自由貿易協定(FTA)が発効![前]--日本企業は韓国に流出するか

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韓国の「戦略」に学ぶべき

まず1つは「戦略の差」である。韓国は07年7月に「Korea’s FTA Policy」を公表した。そこでは、FTA交渉国の優先順位を定めるとともに、その手段として、(1)ハイレベルで包括的な自由化、(2)同時多発的なFTA交渉の推進、(3)官と民によるFTA推進、という3点を掲げている。
 
 一方、日本のFTA交渉のスケジュールは04年12月の「今後の経済連携協定の推進についての基本方針」に記述されているが、どの国とどのような優先順位で交渉するかはまったく明確でない。

次に「交渉体制の違い」である。韓国外務通商部にはFTA局がある。ここにFTA担当大臣と大使がおり、FTAの交渉窓口が一元化されている。他方、日本は、外務省、経済産業省、財務省、そして農林水産省と頭が4つもある。そのため各国の交渉担当者が「日本政府とは誰と話をしていいかわからない」と困惑する始末だ。
 
 2年前に韓国を訪問した際にFTA担当大使を含むFTA関係者と話をしたが、「自分たちがFTAを進める」という確固たる自信を持っていたことが印象に残っている。官僚たたきを続けてきた日本とは大きく違う。
 
 各省庁が連携して国家的な戦略を実現すべく行動するには、何よりも政治がその戦略を示さなければならない。FTAこそ政治のイニシアティブが必要な政策分野だ。

今後40年で労働力人口が40%も減少する人類が経験したことのない少子高齢化社会において、いかに私たちの子孫に経済的な繁栄を残すのか。大震災のショックで内向きな閉鎖経済に陥ってはならない。
 
 東日本大震災復興構想会議の提言においても、自由貿易体制の推進が明記された。これからの日本の通商戦略について、まずは民主党内で早急に議論を進めたい。

次回は、韓国がFTAと立地優遇措置で日本企業を韓国に誘致している状況について触れたい。

※写真と本文は関係ありません

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