静岡が「お国自慢」を実は自慢しきれない理由 「お茶王国」「サッカー大国」は本当か?

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南九州市に到着した取材班が目にしたのは、広大なお茶畑。確かにお茶の生産は盛んなようだ。そして、お茶を麺に練り込んだ「お茶ラーメン」やお茶のダシを使ったしゃぶしゃぶなどのお茶グルメのほか、「お茶むらい」という、まげがお茶っ葉になっている侍ふうのゆるキャラがいることなどもわかった。

南九州市には広大な茶畑が広がっていた(写真は知覧町、さくら / PIXTA)

南九州市はもともと「川辺町」「知覧町」「頴娃町」という3つの町だった。それが市町村合併の流れで2007年12月に合併して誕生した歴史がある。もともとお茶づくりが盛んだった3地域が一緒になったことで、生産量が合算され、市町村別でみると静岡の有力な生産地をしのぐほどまで大きくなったというワケだ。

南九州市のお茶が有名でないことには理由がある。あまり知られていない話だが、お茶は特定の産地の茶葉を半分以上使用してつくると、その産地名を前面に出して売ることができる。たとえば、静岡県産の茶葉が50%以上入ってさえいれば、残りは違う産地の茶葉でブレンドしていたとしても「静岡茶ブレンド」を名乗れる。

南九州市の茶葉は、静岡など有名産地の茶葉と混ぜるために使われているケースが多い。ただ、合併後、7年連続で市町村別のお茶生産量ランキングの王者に輝いた実績が評価されたのか、来年から南九州市の茶葉を100%使用する「知覧茶」が大々的に販売されることになった。

イメージの強い、あの3つもナンバーワンではない!?

静岡を代表するお茶だけではない。ほかにも静岡と聞くと連想するモノに意外な3つの事実がある。

ひとつめはウナギ。静岡の浜名湖は、古くから知られるうなぎの名産地であり、「うなぎパイ」はいまや誰もが知る静岡土産の定番。ところが、うなぎの収穫量を調べてみると、静岡は2013年で全国4位(農林水産統計)に甘んじている。

2つめは富士山。2013年6月に世界文化遺産にも登録された日本のシンボルだ。富士山には登山ルートが4つある。ひとつは山梨県から、残る3つは静岡県から登る。それなら、静岡から登る人が圧倒的に多いかと思いきや、富士山登山の約6割が山梨からのルートを利用しているという。

3つめはサッカー。静岡はあのキング・カズこと三浦知良さんの出身地であり、日本代表選手を数多く輩出しているサッカー大国というイメージがあるが、ここ10年の全国高等学校サッカーのランキングで静岡は5位だ。十分高いレベルにはあるものの、サッカー大国の名を冠するには物足りない感じもする。

それにしてもお茶にしろウナギにしろ、富士山、サッカーにしても、いずれも静岡の「お国自慢」としてのイメージが強い人は少なくないだろう。なぜだろうか。

少し視点を変えると答えにたどり着く。生産量でなく支出金額を見てみよう。するとお茶の支出金額1位は静岡市、2位が浜松市。うなぎのそれも同じく浜松市が1位だ。

富士山をめぐっては、こんなデータがある。平成20(2008)年に交付された「富士山ナンバー」、自動車のナンバープレートの登録者数である。静岡県と山梨県の一部の地域が対象なのだが、富士山ナンバーを付けている静岡県民の車は山梨県民のそれよりも5倍以上多い。サッカーについては、この1年でサッカーをやった人の割合である「サッカー行動者率」を調べてみると、静岡は堂々の1位だ。

つまり、静岡人はみずからの「お国自慢」であるお茶やウナギにたくさんおカネを払い、富士山やサッカーをこよなく愛する。お茶、ウナギ、富士山、サッカー。全国的に見て、これらに静岡のイメージが強いのもうなずける。ただ、実は自慢しきれないというジレンマが裏側にはある。

TBS『世にも不思議なランキング なんで?なんで?なんで?』取材班

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TBSテレビ『世にも不思議なランキング なんで?なんで?なんで?』は、さまざまなテーマのランキングデータの謎に注目し、その結果から“なんでランクインしたのか?”を徹底的に解き明かす情報エンターテインメント番組。2015年4月20日(月)よる8時スタート。

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