「SHOGUN 将軍」リアルな日本描写を世界が絶賛 巨額予算に込められた「欧米でもウケる」という自信

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タイミングも絶好。Netflixの『イカゲーム』や『BEEF/ビーフ〜逆上〜』の大ヒットは、欧米の若い人たちは出演者がアジア系であることを気にしないのだということを証明した。Netflixが昨年末に公表したアクセスデータにも、上位に韓国の作品が複数入っている。

1980年に一度ドラマ化された小説をリメイクする企画は長いことあったもので、完成が今になったのはあくまで偶然。2019年には、撮影開始を目の前にしながら振り出しに戻り、新たな脚本家のもとに再スタートさせているのだ。

そこでもまたお金がかかったわけだが、そのおかげで良いものができただけでなく、遅れもまた結果的に功を奏し、受け入れられる体勢ができているところへ満を持して現れることになったわけである。

将軍 SHOGUN
(c)Courtesy of FX Networks

日本をリアルに描写

だが、日本人としてこのドラマをすばらしいと感じさせるもうひとつのことは、そういった潜在的な幅広い視聴者の多くがおそらくまるで気にしないであろう、細かい日本の描写にもしっかりとお金を使ってくれていることだ。

過去にハリウッドは、日本人が見ればすぐ日本で撮影していないとわかる日本を、何度となく映画やテレビに出してきた。『SHOGUN 将軍』は、それを一切やらない。撮影場所であるカナダのブリティッシュ・コロンビアに作られたセットは、引きのショットでも、クローズアップでも、まるで日本人によって日本で作られたもののように感じ、違和感がまるでないのである。

登場人物たちが話の中で歌を詠むシーンも、何度も出てくる。日本以外の視聴者はそれらの短歌も英語の字幕で読むので(字幕では単純にpoemと訳されている)、リズムもわからないし、それらが優れたものなのかどうかもわからないだろう。

それを知っていながら、それが本物であるから、そして日本人にはわかるから、やっているのだ。シリーズの後半に出てくる茶道のマナーも、日本以外の人はほとんど気にしないだろうが、きちんとしている。

SHOGUN 将軍
(c)Courtesy of FX Networks
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