ついにトンネル抜けた?楽天の未来占う3つの焦点 連続赤字でも株価急騰、モバイルは黒字間近か

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第1に、モバイルの契約数だ。2023年12月末の契約数(MVNO・BCPを除く)は596万と、10~12月の3カ月で84万回線増えた。

四半期ごとの増え幅としては、300万人まで月額使用料を1年間に限って無料とするキャンペーンなどでユーザーを急拡大させていた2021年1~3月期(純増数は123万)に次ぐ水準となった。

楽天モバイルの契約数と顧客単価推移

楽天は、2024年中に契約数を800万から1000万まで押し上げることを目標に掲げる。ユーザー1人当たりの平均単価を2500円~3000円と仮定した場合、この契約数がモバイル事業を黒字化できる水準とみているからだ。

直近四半期の増加ペースを2024年末まで維持できれば、単純計算で契約数は932万に達し、黒字化の下限として示した800万を大きく上回ることになる。

足元の伸びは法人向けが牽引

ただ、目標達成に向けては課題もある。個人ユーザーの開拓だ。

足元の契約数の伸びを牽引しているのは、楽天が2023年1月からサービス提供を始めた法人向けが中心とみられる。実際、決算資料では「B2Bは(中略)年末にかけてパイプラインの獲得が大幅に進み、第4四半期の契約回線数が顕著に増加」と記されている。

料金の割安感を訴求し、従来取引のある約90万社の顧客基盤を中心に新規獲得を続けているもようだが、楽天の取引先は従業員数の少ない中小企業が大半を占める。競合キャリアが先行して長らくサービスを提供している領域でもあり、この1年の勢いを持続したまま乗り換えを促す難易度は高いだろう。

さらに言えば、業務用の法人向け携帯の契約数は、国内市場全体の1~2割程度とされる。法人頼みのままでは、早晩伸びが鈍化しかねない。

昨年末に法人向けの契約が急増したことで、ユーザーの単価にも影響が出ている。2023年9~12月期の平均単価は1986円と、前の四半期比で3%低下した。個人向けより単価が低い傾向にある法人向けの比率が高まったことが響いたようだ。

先述の通り、契約数800万~1000万での黒字化の前提条件として、会社側はユーザー単価を2500~3000円と設定している。現状比で2割以上引き上げる必要がある。

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