原子力研究の落日、使命を見失った学者たち--象牙の塔の「罪と罰」

 

 

5月21日、都内のとあるホテル。福島第一原子力発電所事故後初めてとなる、日本原子力学会のシンポジウムが開かれた。傍聴席からの質問に答え、東京大学の岡本孝司教授は、「津波に対するリスクの認識が非常に甘かった」と学会の責任について言及した。だが、事故発生からすでに2カ月余り。遅すぎた反省の弁は、むなしく会場に響き渡った。

学界は原子力業界の基盤を成す存在だ。原子炉メーカーや電力会社など産業界に人材を送り込むほか、日本の原子力政策を決める原子力委員会、安全基準の策定や審査を行う原子力安全委員会など、国の中枢機関の構成員の多くも、研究者が占める。それだけに、今回の事故で問われる責任も重い。

原発の安全確保について、「結果として、学者は専門家としての力量を提供できていなかった」。そう分析するのは、放射線防護学を専門とする立命館大学の安斎育郎名誉教授。「原発の安全審査は、原子炉等規制法による基本設計に合致しているかどうかしかチェックしない。だが、たとえば緊急冷却装置が非常時に本当に機能するかの実証などは別に必要で、本来はこれを学者がやるべきだった」。

推進派の巣窟・東大、反対派には嫌がらせも

実際には、学者は原子炉の暴走を止めることができなかった。その理由の一つとして考えられるのは、学問における安全性の位置づけだ。「安全性研究は先端的な研究分野ではないため、成果が高く評価されない。学者が最も力を入れる領域ではない」(原子力発電や地球温暖化に詳しい山地憲治・東大名誉教授)。

しかも原子力工学は純粋科学ではない。技術を応用し社会に役立てる実学であり、原子力を繁栄させることを目的とする人間が集まる。「自然と推進派ばかりになり、危険性に警鐘を鳴らす学者は減る。年間何千億円という研究費で潤い、異常にカネ回りがいい。カネの動くほうに流される研究者も多かった」(京都大学原子炉実験所の今中哲二助教)。

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