なぜ反原発運動は黙殺されてきたのか--偏見と無関心の厚い壁、「枠」を壊し反転攻勢

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 大会議案書に「原発反対」と毎年打ち出してきた全国労働組合連絡協議会(全労協)も、反原発の旗振り役にはなれずにいる。全労協加盟組織の全国一般労働組合の石川源嗣・中央副執行委員長は、「これまでの運動の蓄積を生かしたい。労働運動が真正面から取り組むべきテーマだ」と高円寺のデモにも参加したが、「組織全体として反原発運動への意欲が高いとはいいがたい」とも語る。

反原発運動にトラウマ 既存の反対派は低体温

反原発の論客として活躍した故・高木仁三郎博士が75年に設立したNPO法人「原子力資料情報室」は、長らく反原発運動の中核を担ってきた。福島の事故後も積極的に情報発信をしている。ただ緊急的なデモの旗振りなど、直接的な抗議行動には目下動いていない。かつて情報室ではチェルノブイリ原発事故後の88年、脱原発法制定に向け署名運動を行った。350万人という反原発運動史上最大級の署名を集めたが、自民党政権下で歯牙にもかけられなかったという苦い記憶もある。西尾漠共同代表は「これまでの負け続けの運動の経緯を知る中高年層ほど、運動へのトラウマはまだ強い」と言う。

とはいえ反原発運動には勝利の歴史もある。住民投票で原発建設を白紙撤回させた新潟県巻町(現・新潟市)の例だ。

巻町では、60年代から東北電力が原発予定地として用地や漁業権を買収。ただ、町長は慎重論を掲げて当選しており、計画は膠着状態が続いていた。94年、「原発建設凍結」を掲げて2期連続当選した佐藤完爾前町長が、3期目に突如として原発推進に転向。住民は危機感を募らせ、これまで沈黙してきた酒造会社経営者の笹口孝明氏を中心に、地元の商店主たちが「住民投票を実施する会」を発足させた。

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