推薦入試が5割で「一般入試枠が減少」へのギモン 何歳からでも大学で学べる機会が減る危機

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このように理念と行動が逆方向を向いている現状は、国のめざす「生涯学習社会」の実現からはほど遠い。以上の理由で、筆者は、推薦入試のこれ以上の拡大には反対である。

筆者は家族に大卒者のいない年収200万円の家庭から、偏差値40の商業高校に進学した。高校を出てから自分の人生を挽回したいと思い、正社員として受験費用を貯めながら9年間受験勉強を続けたが、親族から「大学なんか行く意味ない」という批判を受け続けた。

勉強を教える場としての地元予備校でも、「勉強なんて参考書を暗記すれば何でもできる」という受験への解像度が低い情報しか入ってこなかった。

一般入試で救われる層の受け入れが減る

そんな大学受験に非協力的で、情報が入らない環境にいた人間でも、今までなら過去問を入手して演習を重ねることでカバーできた。ノウハウが何もなくても、何年分、何十年分とやりこむことで、大学が求めている知識や能力を理解でき、都会の同級生と同じ土俵に立てたからだ。こうして私は早稲田大学の過去問を80年分解いて、27歳で入学した。

「そんな年齢で大学に入ったところで就職できないからもったいない」と思う人も多いだろう。たしかに私自身、「新卒一括採用」の仕組みが根強い日本では大手企業に就職をすることこそ難しかった。しかし、「教育関係」という進みたい道が定まっていたので、大学の環境に再チャレンジの機会は十分に与えてもらえたと思っている。

教員免許の資格も取れたし、早稲田大学でできた結びつきによって教育の仕事につながる機会をもらえたし、一生ものの仲間にも会えた。

学歴社会が終わったと思われる現代でもまだまだ、学歴の効用や、大学に行くメリットはとても大きいと感じる。大学は「若者」が就職活動のためだけに行く就活予備校ではなく、学びと出会いで人生を豊かにする場所なのだ。

だからこそ、推薦入試が増えることで、一般入試でしか救われない層の受け入れが減ってしまう現実は、自分にとってはとてもつらいことなのだ。

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