電力会社8社と東京ガスを格下げ、格下げ方向での見直しを継続《ムーディーズの業界分析》

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 支援機構に対する負担金に加えて、原子力発電への依存度は低下する可能性があり、その場合は火力発電への依存度を高めざるをえず、その結果、石炭やLNGの購入コストが大幅に増加するだろう。これらの燃料費増加は電気料金の値上げ圧力となり、厳しい経済環境下にある日本では、家庭、商業、工業のすべての顧客にとって、エネルギーコストの上昇をもたらす可能性があろう。

電力とガス各社の格付けは、格下げ方向での見直しを継続する。1つには、政府の原子力損害賠償支援機構法案の先行きが不透明であることを考慮している。当法案は、今後2~3カ月間、国会で審議される見込みであるものの、法案の重要事項はまだ固まっていない。

経済が厳しい状況下で、比較的コストの安い原子力発電を、まずはよりコストの高い火力発電で、そしてゆくゆくは再生可能エネルギーによって置き換えるようなことになると、電力会社の事業コストの増加につながり、コスト構造が不安定になるであろう。

ムーディーズは、今後も規制環境の変化、政府による福島第一の事故対応や、今後の原子力発電に対する政策を注目していく。

また、これらのすべての格付けには、サポートシステム要因が考慮されており、5月31日に格下げ方向で見直しとなっている日本国債と国内金融機関の格付けの結論が出るまでは、格下げ方向での見直しを継続する。現在、電力・ガス会社の格付けは、日本政府と主要な銀行から暗黙の財務的支援が期待できるためアップリフトされているが、日本国債と国内金融機関の格下げは、日本のサポートシステム要因の低下につながる可能性がある。

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