過酷な環境で学ぶ南相馬市の小中学生、エアコン設置は夏休み後に先送りに

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過酷な環境で学ぶ南相馬市の小中学生、エアコン設置は夏休み後に先送りに

福島第一原子力発電所の爆発事故をきっかけに、立ち入り禁止の「避難指示区域」(その後、無断立ち入りに罰則のある「警戒区域」に変更)や、要介護高齢者および子どもの立ち入りを制限する「緊急時避難準備区域」など、4つの区域に市内が分断された福島県南相馬市--。
 
 市役所が所在する原町区など第一原発から20~30キロメートル圏にある緊急時避難準備区域で小中学校が休校になっていることから、親の事情等で同区域に住む児童生徒は、30キロ圏外にある鹿島区の小中学校に、市が用意したバスで通学している。
 
 ところが、鹿島区の小中学校では小中学生数の急増に学校設備の改善が追いつかず、エアコンの設置も実現できないまま、1学期を終えることになりそうだ。

市教育委員会の小林総一郎教育総務課長は東洋経済記者に、「7月22日の1学期終了までにエアコンを設置できる見通しは立っていない」と説明。
 
 「ボランティア団体からの支援で鹿島区の小学校3校、中学校1校に百数十台のエアコンを設置すべく話を進めてきたが、進み具合が鈍っている。ざっくばらんに話をしてうまくいかないということであれば、予算編成の中での対応を新たな選択肢にしたい」と語っている。

現在、鹿島区の小中学校では、図書室や図工室、コンピュータ室のみならず、体育館(鹿島小学校)や柔剣道場(鹿島中学校)、地域のスポーツ施設を使って授業が行われている。ユニセフや個人からの寄付により扇風機の設置が実現したものの、待ち望まれていたエアコンの設置は暗礁に乗り上げた形だ。
 
 文部科学省が用意した国庫補助制度を使ってエアコン設置を進めることは可能とみられるが、県を通じて予算要望を上げていく必要がある。ただし、1学期末までどころか、暑さが続く9月末までに間に合わせるのも難しそうだ。

鹿島区にある上真野小学校は、従来からの児童105人のほかに、原町区の石神第二小学校および警戒区域(立ち入り禁止)の小高区にある金房小学校、鳩原小学校から計210人の児童を受け入れている。
 
 そのため、図書室やコンピュータ室なども通常の教室としてやむをえず使用している。校庭での運動やプールも、放射線を避けるために中止されている。家庭科室での調理実習もできないという。
 
 上真野小の飯塚宏校長(右写真)は「子どもは環境への順応が早いものの、内心は不満だらけ。しかし文句を言うこともできない」と説明する。

原発事故については、「人災」の側面があることは、原子力安全委員会の斑目春樹委員長も認めているところだ。それだけに、国は原発で生じた問題について市町村任せにせず、解決に向けて自ら積極的に動くべきではなかろうか。



■上真野小1年生の子どもたち


■上真野小学校で学ぶ石神第二小学校1年生の子ども


■上真野小の2年生


■「そとであそべますように」と書かれた七夕の短冊


■教室の扇風機は、静岡県の女性から届けられた


■ユニセフから届いたロッカー

(岡田 広行 =東洋経済オンライン)

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