日本ガイシの株主総会、大容量蓄電が可能な「NAS電池」へ質問が集中

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 --NAS電池はすばらしい技術なのに、技術的なPRが弱い。他社と積極的に組んで、その名前を借りてでも「こんな実績がある」ということをPRし、せっかくのすばらしい技術がつぶれないようにしてほしい。重層的な戦略を描いてほしい。ぜひ世界戦略の中で考えてほしい。

松下雋会長:貴重なご意見ありがとうございます。

--繰り返しNAS電池の話で恐縮だが、世界戦略としてはたとえばABBなどとタイアップして拡大したらどうか。

松下会長:フランスの最大の電力会社と組むなど、提携戦略は進めている。世界的にいろいろと大きな案件はあるのだが、景気後退によりちょっと遅れているのが実態。コストが高いこともあり、なかなか進まない。大きく広げていくためには、コストダウンが必要。もうすこしお待ちいただきたい。

--2点お聞きしたい。節電についてはどのようなことを行うのか。NAS電池の展開についても詳しくうかがいたい。

伊夫伎光雄取締役:生産するトータルの物量は変えないという大前提で、3つの節電対策を行う。1番目が休日の変更。当社は休日をずらして基本的に火曜と水曜を休みにする。2番目が、工場に置くNAS電池を増強する。3番目が、一般の需要家と同じだが、照明を工夫し、冷房温度の設定を変えるなどの細かいことを積み上げていく。

大島卓常務執行役員:NAS電池は現在、一般の工場や大学などからたくさんの引き合いをいただいている。今年の夏は間に合わないが、来年夏に向けて納めていく。大容量の電池を蓄えることができるのは、世界的にNAS電池しかない。ここは、しっかり期待に応えるようにしたい。

--2点お願いしたい。電力関連事業については環境が変わってきたということだが、ではどういう対策を打つのか。また、繰り返しで恐縮だが、NAS電池について、他の二次電池と比べた優位性などをうかがいたい。

松下会長:中国は積極的な投資を進めており、高速鉄道もあるし、ITもある。そしてそのベースになるのが電力だ。これが発展の絵図だったのだが、送電関連に資金を入れすぎ、ということで投資が変更され、2年ほど大きな送電計画が後にずれてしまった。しかし、一定の時間が経過すれば、中国の市況は戻ると見ている。

NAS電池については、東京電力と長く共同開発をやってきた。水力発電所向けでの実用化を目指し、大出力で長時間放出できる電池、というコンセプトでやってきた。しかし、最近ではスマートグリッドなどへのニーズがある。太陽光発電などは少し雲が出れば発電量は大きく下がるため、ギザギザと変動する。大出力は必要ないが、放電と受電を小刻みに繰り返す必要がある。そうしたアプリケーションへの対応としては、電極の間をナトリウムが何度も行ったり来たりする場合の信頼性を高めていく必要がある。ニーズに合わせた開発を進めていく。

総会終了後の柴田前会長による取締役退任あいさつの概要は以下のとおり。

柴田前会長:1959年(昭和34年)、伊勢湾台風のあった年に日本ガイシに入社し、6年間大阪の営業所へ行き、そのあと65年(昭和40年)から7年間ニューヨークへ行った。その当時、当社はガイシを大量にアメリカへ輸出しており、私は新製品の探索を命じられた。その後、東京に戻って10年ほど化工機、下水道関連の営業をやった。その後、大幅な赤字だったグループ会社を再建しろ、ということで再びアメリカへ行った。そして今から28年前、アメリカの駐在をしているときに取締役になった。

はじめて取締役会に出たときには、まったく本社勤務がなかったため、警備員に呼び止められ、受付でも「どなたですか」と言われたものだ。以後、28年役員を続けてきた。そして社長を8年、会長を9年やり、松下さんと加藤(太郎社長)さんへバトンタッチした。2002年に会長になったときに、奥田碩さん(元トヨタ自動車社長)が新経団連会長になったこともあり、経団連副会長を4年やり、海外をずいぶん回った。合計8年経団連で務めたが、日本ガイシの知名度向上には役立ったと思う。

このように、社外の仕事をできたのは、松下さん以下が立派にやってくれていたからだ。28年間取締役をやり、大過なくすごせたのは、株主、先輩、同僚、そして社員のサポートがあってこそ。皆様に感謝している。まことにありがとうございます。

(山田 俊浩 =東洋経済オンライン)

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