妻の海外転勤で「主夫」になった彼が後悔したこと 子育てする同僚に「なぜ辞めないの?」と暴言も

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一禎さんがアメリカ滞在中に作った料理。料理のメイン担当は一禎さんが担い、子どものお弁当作りは真美子さんが担当していたそう。駐夫生活が終わった今、メイン担当は真美子さんに戻っているとか(写真提供:一禎さん)

一禎さんは「駐夫」になったことで、自分のキャリア断絶に落ち込んだり、バリバリ働く男性とのギャップに苦しみました。その経験があったからこそ、女性の立場や気持ちがやっと理解できるようになったのです。

そこに気づいた一禎さんは、真美子さんにも、育休や時短勤務でキャリアが中断したときの気持ちを尋ねたそうです。すると真美子さんは「キャリアを中断するのが嫌で、子どもがほしくないと思ったこともある」「出張ができなかったり、興味ある分野の仕事が蚊帳の外で進んだり、悔しい思いをしたことがある」「でも子どもを言い訳にしたくなかったから、時短時代も効率を重視して、成果を上げてきた」などの思いを初めて吐露したそうです。それは一禎さんにとってはまったく予想外で、衝撃を受けたそう。もし、駐夫経験がなかったら、一禎さんは妻の本音を一生聞くことができなかったかもしれません。

「悪気ない乱暴な言葉」にさらされながら仕事を続けている女性の現実

一禎さんは「1年間の男性育休」「3年間の駐夫」と珍しい経験をしたこととで、「家事育児の大変さ」や「キャリア断絶に苦しむ女性の気持ち」がだんだんわかるようになりました。でも、多くの男性は、そういう大きな生活の変化を経験しないため、そこに無自覚なままです。無自覚な人が同僚や上司にいて「悪気ない乱暴な言葉」にさらされながら仕事を続けている。これが働く女性の現実なのです。

さて、次回は、家事育児へ気持ちが変わっても、一禎さんがなかなか脱却できない「マッチョイズム(伝統的な男らしさを重んじる思想)とのジレンマ」について考えてみます。

ハラユキ イラストレーター、コミックエッセイスト

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はらゆき / Harayuki

雑誌、書籍、広告、Webなどの媒体で執筆しつつ、コミックエッセイの著書も出版。2017年から約2年間バルセロナに住んだことをきっかけに、海外取材もスタートさせる。著書に『女子が踊れば!』 (幻冬舎)、『王子と赤ちゃん』(講談社)、『オラ!スペイン旅ごはん』(イースト・プレス)、この連載を書籍化した『ほしいのはつかれない家族』(講談社)など。この連載のオンライン・コミュニティ「バル・ハラユキ」も主宰し「つかれない家族をつくる方法」を日々探求、発信中。ハラユキさんのHPはこちら

 

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