【産業天気図・化学】エチレンのフル生産続くが、海外市況と好調品種の差で明暗

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2005年の国内エチレン生産量は761.8万トン(前年比0.6%増)だった。最近の稼働プラントの稼働率は100%のフル稼働状態が続いている。ただ、原油価格の高騰を受け、国産ナフサ価格は1キロリットル当たり4万円台の高値に張りついている。
 総合化学大手4社で見ると、05年度上期(4~9月)には3.8万円前後だったのが、第3四半期(10~12月)には4.7万円台まで上昇した。しかし年明け後、やや軟化し「第4四半期(1~3月)は4.6万円台に低下する」との予想も出ている。これに連動して各社は製品価格の是正を進めるが、末端の小売価格の値上げが厳しくなり、価格転嫁は遅れている。
 製品別ではポリエチレンの需給がレジン・製品輸入の影響で軟化する一方、ポリプロピレンは自動車・家電向けに好調を持続。また、合繊原料のエチレングリコール、高純度テレフタル酸、アクリロニトリルなどが中国市場の調整もあって第3四半期に海外市況が弱含みとなった。
 反面、半導体関連の300ミリシリコンウエハ事業(信越化学工業<4063.東証>)は内外で好調。液晶ディスプレイ材料の偏光フィルム(住友化学<4005.東証>)も大幅に伸び、急ピッチの設備増強が続いている。こうした好調品目を抱える住化と信越化は05年度、増益となるが、合繊原料市況が低下した三井化学<4183.東証>や旭化成<3407.東証>は減益の見込み、と明暗が別れる。
 06年度は原油とナフサの価格動向がカギだが、エチレンの高稼働は続く。塩ビや合繊原料のアジア市況が不透明だが、半導体・液晶関連分野では少なくとも上期までは好調が続こう。ただ、薬価改定の影響が一部企業には出る。その中で成長分野への積極投資、M&Aが活発化する公算が高い。旭化成は今後5年間で4000億円を投資し、エレクトロニクス、高機能ケミカル、ファーマなどを拡大する方針を打ち出した。
【宇田川日出雄記者】


(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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