知っておいて損はない「津波」情報との接し方 「津波警報へ切り替え」の表現が意味すること

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次に、津波に関する報道でよく見かける、「津波の到達予想時刻」に関する注意点です。

津波の到達予想時刻を表示する際、震源に近い地域では「すでに到達か」「津波到達中と推測」などと表現されていることがあります。その時、既に押し寄せた津波の第1波が比較的小さくても、津波の第2波、第3波などが、第1波より大きな津波となることは珍しくありません。

実際に、令和6年能登半島地震で観測された津波でも、第2波以降で津波の高さが大きくなる事例が見られています。下の図は、気象庁による報道発表資料です。グラフは津波観測状況(波形)を表し、時間(横軸)と津波の高さ(縦軸)を示しています。

一番上のグラフは酒田(山形県酒田市)の観測データですが、第1波(青丸)より、その後に続く第2波以降のほうが津波の高さが高く、グラフの期間における最大の波は赤丸で示した波でした。

酒田における第1波観測は17:12とされていますが、最大波観測は19:08とされており、第1波到達から2時間近く経過した後であることがわかります。大津波警報や津波警報の発表時は、「第1波到達」の津波の高さが低くても甘く見ず、より大きな津波が押し寄せる可能性を考えて速やかな避難を行いましょう。

津波の気象庁資料
(画像:気象庁「令和6年能登半島地震」について(第3報)の津波波形図に筆者が一部を加工)

さらに岬の先端や湾の奥といった地形では、周囲より高い津波が押し寄せることもあります。

過小評価は禁物

また今回の能登半島地震では富山湾で海底地すべり痕跡が発見されました。これにより、震源付近とは「別の発生源」による津波が起きていた可能性も指摘されています。

これらのことをふまえ、最初に到達した津波を見て「この程度なら避難はいらないだろう」と過小評価することなく、少しでも高い土地にある「安全な場所」に避難を行う必要があります。例えば津波を撮影しようと思って、海の近くなどに留まることは危険です。

もうひとつ、上の津波波形からわかることは「津波が来る前に必ず『引き波』が起きるわけではない」ということです。

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