出世する人は、「算数」をうまく使っている 「足し算引き算」レベルで評価が変わる

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ではここから、「表」を使うことについて深めていきたいと思います。
 なぜ「表」が整理する行為に適しているのか。それは、空欄があるからです。ある著名な講演家の方がおっしゃっていた印象的な言葉があります。

「人は、空欄があるとそれを埋めたくなる生き物なんです」

確かに、ポッカリ空いた空欄がそのままだと、気持ち悪い感覚になるのは私だけではないはずです。無意識に「整理しよう」「漏れなくダブりなく全部書き出そう」といった思考になれるのが、「表」のチカラなのでしょう。

面白い傾向があります。社員研修の様子を眺めていると、成果を出している課長とそうでない課長には、思考している時の手の動かし方が違うのです。

端的にまとめると、

<デキる課長>
ノートや別紙、ホワイトボードなどに大きく表・グラフ・矢印を描きながら整理している
<まあまあな課長>
イメージ図を紙の余白に小さく走り書きし、その後は手が止まりじっと考えている
<残念な課長>
何も描かず、頬杖をついてじっと考えている

なぜ成果を出せる優秀な課長は「表」で整理するのか

このような差は、さまざまな業種のミドルマネジメント層で共通して見られることです。このような差が生まれる理由を、私はこう解釈しています。

たとえば会議。部下が混乱したり、ピンときたりしていない局面があったら、ホワイトボードなどを使って説明することもあるでしょう。その際、部下にイメージを持ってもらうのか、頭の中をスッキリ整理させてあげるのか、用途によってホワイトボードに描くものは分けたほうがいいはずです。

なぜ優れたコンサルタントがグラフや表の使い方が上手かというと、悩み深く、混乱状態にあるクライアントの頭の中をスッキリ整理させ、見えていなかったことに気付かせることが上手だから。「なるほど、そう整理すればこんな簡単なことでしたね」と思わせることが仕事だから。課長が部下にすべきことも、それと同じということです。

どんなことでもわかりやすく整理して伝えてくれる上司は、きっと部下からスマートな上司に映っているはず。結果として部下からの信頼が生まれ、チームとしてパフォーマンスが上がっていくという構図です。

いかがでしょうか。

今回登場した計算は、「引き算」だけです。冒頭で、仕事の数字は、算数レベルの計算で対応できるというお話を少しは信じていただけたでしょうか。

次回のテーマは、課長にとって重要な仕事のひとつである、部長など上司との調整。算数レベルの知識の範囲で、いかに数字を活用して「落としどころ」を作るかについてお話したいと思います。

深沢 真太郎 BMコンサルティング代表取締役、ビジネス数学教育家

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ふかさわ しんたろう / Shintaro Fukasawa

一般社団法人日本ビジネス数学協会代表理事。ビジネス数学を提唱する人材教育のプロフェショナル。公益財団法人日本数学検定協会主催「ビジネス数学検定」1級(AAA)は日本最上位。これまでに指導した人数は、延べ7000人。「ビジネス数学」の第一人者として確固たる地位を築く。企業研修のほか学生やプロスポーツ選手などの教育研修にも登壇。数学的な人材の育成に力を入れている。著書に『「仕事」に使える数学』(ダイヤモンド社)、『数学女子智香が教える 仕事で数字を使うって、こういうことです。』(日本実業出版社)など。2018年には小説家としてデビュー作『論理ガール』(実務教育出版)を上梓。

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