日本は「金融正常化」しなければ沈んでいくだけだ 異常な円安にも終止符を打つことができる

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金利が低ければ収益性の低い投資が行われる。また、財政資金の調達が容易になるので、必要性の疑わしい財政支出がなされる。その結果、資源の無駄遣いが生じ、長期的に見た日本経済のパフォーマンスに負の影響を及ぼす。これは、「財政・金融政策の近視眼化」と言ってもよい現象だ。

また、日本の金利が世界的に見て(特にアメリカの金利に比べて)低すぎることは、過度の円安をもたらし、物価の上昇や、日本の国際的地位の急速な下落などさまざまな問題をもたらした。

こうした状況からは、一刻も早く脱却する必要がある。従って、マイナス金利とYCCからの脱却は、一刻も早く実現すべき課題だった。とくに、日銀総裁が交代した2023年の早い時期に、それが行われるべきだった。ところが、実際には、長期金利の上限見直しがなされただけで、上のような意味での金融正常化は、いまに至るも、行われていない。

金融正常化すれば、異常な円安から脱却できる可能性

2024年には、アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)による金利の引き上げが終わり、場合によっては引き下げの過程に入る。これに加えて日本が長期金利の抑制策をやめれば、日米間の金利差が縮小する。

この結果、これまで数年間にわたって続いてきた異常な円安が終わる可能性がある。場合によっては、急激な円高に転じる可能性もある。

これは、上に述べた意味での円安の弊害をなくす意味で、日本経済の長期的パフォーマンスにとって望ましいことだ。しかし、短期的には多くの問題をもたらす。とりわけ、企業の収益に対して、大きなマイナスの影響があるだろう。

それを恐れて、金融正常化が遅れる可能性がある。しかし、円安による企業利益の増加は、数字上のものにすぎず、生産活動の拡大を伴うものではないことに注意が必要だ。 

金利が上昇すれば、国債による財政資金調達は、より困難になる(2024年度予算において、国債の利払い費の想定金利は、2023年度の1.1%から1.9%に引き上げられる)。

これは一般には予算編成を困難にするという意味で望ましくないことだと考えられている。しかし、2023年12月24日の本欄で述べたように、この数年間税収が順調に増加したために、財政規律が弛緩している。また、財政資金が潤沢なうちに基金として積み上げておき、後で自由に使おうという動きも広まった。こうした動きにチェックをかけることが必要だ。

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