被災地で広がる生活保護をめぐる混乱、南相馬市のケースワーカーはわずか4人に

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被災地で広がる生活保護をめぐる混乱、南相馬市のケースワーカーはわずか4人に

東日本大震災の義捐金や東京電力福島第1原発事故に伴う仮払補償金を収入として認定されることによる生活保護の打ち切りが拡大し続けている。

打ち切り措置が最も顕著となっているとみられる福島県南相馬市で引き続き生活保護廃止世帯が増加しているだけでなく、宮城県、岩手県でも同様に生活保護が打ち切られるケースが出てきている。

南相馬市で6月22日現在、168世帯が生活保護を停止された。6月17日の152世帯から16世帯増加したことになる。また、市外に避難中の世帯でも停止になるケースがあり、「福島市などに避難中の42世帯が生活保護を打ち切られている」と荒木ちえこ・南相馬市議会議員は指摘する。

こうした事態を踏まえて、「全国生活と健康を守る会連合会は」は6月24日、細川律夫・厚生労働大臣に「被災地での義捐金等の収入認定による生活保護の廃止をしないことを求める要望書」を提出した。同要望書は、(1)被災地の生活保護打ち切りの現場を調査し、ただちに保護打ち切りを中止させること(2)義捐金や東電仮払金などについては、その趣旨が生かされるよう、全額を収入認定から除外すること、の2点を求めている。

南相馬市では、原発の水素爆発後、ケースワーカーが市外に避難する動きが相次ぎ、「残った4人のケースワーカーが300超の生活保護世帯をみるという状況になった」(弦弓高明・福島県生活と健康を守る会連合会事務局長)と言う。震災、原発事故が重なるという混乱状況のなかでは、ケースワーカーがわずか4人というのはあまりにも劣悪な状態と言わざるを得ない。

ましてや、自治体職員やケースワーカーも被災しているということを考えると、厚生労働省が打ち出した「収入認定の柔軟化」措置は、過酷な状況で業務にあたる自治体職員やケースワーカーに「自立更正計画のチェック、収入認定」を一任することで、過剰な負担になっている可能性もある。

被災地では現在、仕事を喪失する住民が激増している。結果として、今後、生活保護の新規申請も拡大するものとみられる。そうしたなかで、現状のような現地任せの柔軟化措置を続ければ、この面での被災地の混乱がさらにひどくなりかねない。
(浪川 攻=東洋経済オンライン) 

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