「東芝の会計問題、危機管理が不十分だ」 第三者委を歴任してきた久保利弁護士に聞く

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久保利 英明(くぼり・ひであき)●日比谷パーク法律事務所代表弁護士。1967年、東京大学法学部4年在学中に司法試験合格、71年弁護士登録。98年事務所開設。マルハニチロホールディングス「農薬混入事件に関する第三者検証委員会」委員、ゼンショーホールディングス「『すき家』の労働環境改善に関する第三者委員会」委員長 などを歴任。

――第三者委員会の調査報告提出まで約2カ月、期間は適正か。

第三者委員会にも2つの要素がある。どこまで調査するのかによって、すごく長くなることもある。一方で、相当重たいミッションであっても、全速力で駆け抜ける迅速型であれば、ある程度の期間で終わることもある。問題はそのレベル感だ。できあがった報告書は徹底的に吟味されるから、相当しっかりしたものでないと、「なに?この第三者委員会は」と言われる報告書になってしまうかもしれない。

私は以前、ゼンショーの第三者委員会の委員長をやっていたが、2カ月半以上みっちり調査をした。アンケートを取り、ヒヤリングもした。現場が全国に散らばっているので、全国を網羅するような情報収集をしなければならなかった。だがこれはしょせん国内だった。東芝には海外や輸出もあり、海外でやっている工事や、海外で作って海外で売るといったようなものも、当然絡んでくる。そういうもの全部を徹底的に調査するという話になると、とてもじゃないが、2カ月でできるような話ではない。私なら勘弁してくれと言いたいところだ。

――どのような経営責任の取り方が想定されるか。

現社長にメインの責任はないかもしれないが、今回クライシスが起きたのが現社長の時だから、発生時責任はあらゆる責任の中で結構重い。

東芝だけの話とは限らない

――東芝以外の会社でも起こりうるのか。

ここは分からない。ただ、東芝であったから他の総合電機でもある、という可能性は十分ありうる。例えば2年前に騒がれた食材偽装では、業界全体で横並びにやっていた。ブラックタイガーを車エビと言ったり、ステーキと言いながら合成肉を使ったりした。現場のノウハウとして発明した人がいたのだが、消費者からみればわからないし、みな「おいしい」と言っているから「悪くないよね」ということになっていた。

そう考えると、果たしてこれは東芝だけの話なのか。インフラ業界においては、ごく当たり前のようにやっていることなのかもしれない。また、東芝だけが隠蔽体質かといえば、そうでない。ということは、他の企業にも及ぶ可能性はある。それはもう少し時間差攻撃で出てくるかもしれない。逆によそはもっと深刻にとらえて、発生しないような体制を作っているのかもしれない。

                       (撮影:梅谷秀司)

富田 頌子 東洋経済 記者

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とみた しょうこ / Shoko Tomita

銀行を経て2014年東洋経済新報社入社。電機・家電量販店業界の担当記者や『週刊東洋経済』編集部を経験した後、「東洋経済オンライン」編集部へ。

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