なぜ吉野家の「チョイ飲み」店は人気なのか? 顧客の「行動観察」で見えてきた!

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行動観察を活用すれば、データを読み解く先入観を取り除き、当初、想定していない、因果関係に気づくことができます。

今回の例で言えば、「当初、家で飲みたいから家で飲むと考えられているが、実際には、家にいるような感じで手軽にくつろげれば、家で飲むことにはこだわっていないのではないか」と考察することができます。

もちろん、それだけですべてを結論づけることはできませんが、少なくとも分析者の先入観で相関関係の中に原因と結果を見いだすことはとても危険なのです。

ビッグデータ時代の行動観察とは

商品や店舗の開発はさまざまな手法で行われていますが、このように行動観察を介した開発によって、大ヒットを生み出すケースが増えてきました。

「行動観察」とはその名のとおり、観察者がフィールド(現場)に入り、そこにいる人たちの行動を観察して分析することを意味します。行動観察自体は異文化などを分析するために2000年以上前から行われているメソッドで、それが1980年代以降、本格的に商品やサービスの開発に応用されるようになったのです。

行動観察の強みは、消費者が説明できない潜在的なニーズを明らかにしてくれる点にあります。

ビッグデータを眺めていても、消費者本人にじかにアクセスしないかぎり、その因果はわかりません。さらにたとえじかにアクセスしたとしても、本人自身が意識していない隠れたニーズを深掘りするのは容易ではありません。

そもそも消費者自身が自覚しているニーズは氷山の一角であり、無自覚で顕在化していないニーズが実は大半を占めています。それら無自覚で顕在化していないニーズを掘り起こすことができたら、これまでにない新たなマーケットを作り出したりすることが可能になります。そこで次回は、行動観察から生まれた大ヒット商品のプロセスを追ってみたいと思います。

高橋 広嗣 フィンチジャパン代表取締役

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たかはし ひろつぐ

早稲田大学大学院修了後、野村総合研究所経営コンサルティング部入社。経営戦略・事業戦略立案に関するコンサルタントとして活躍。

2006年「もうひとつの、商品開発チーム」というスローガンを掲げて、国内では数少ない事業・商品開発に特化したコンサルティング会社設立に参画。食品、飲料、通信キャリア、化粧品、製薬メーカー等の事業・商品開発支援を行っている

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