松下幸之助は肯定的な人間観を持っていた 「人間は偉大な存在や」

✎ 1〜 ✎ 47 ✎ 48 ✎ 49 ✎ 50
拡大
縮小
松下幸之助の人間観とは?(写真:シミズアキ/PIXTA)
昭和の大経営者である松下幸之助。彼の言葉は時代を超えた普遍性と説得力を持っている。しかし今の20~40代の新世代リーダーにとって、「経営の神様」は遠い存在になっているのではないだろうか。松下幸之助が、23年にわたって側近として仕えた江口克彦氏に口伝したリーダーシップの奥義と、そのストーリーを味わってほしい。(編集部) 

松下幸之助の「人間観」

松下幸之助の京都の私邸、楓庵に9時に来てくれと電話。12時から真々庵で、大徳寺如意庵、立花大亀老師との予定が入っていた。体調はよさそう。昭和51年(1976)8月。暑い日であった。素直な心についての話のあと、

「きみと、人間観の仕上げをやったな。ちょうど、今時分やったな。昭和46年か。あの人間観は、最初(昭和)26年ごろにまとめたものや。それから20年以上かかったけど、あの人間観は、これからの時代、大事になってくるわ。賛成してくれる人もいるけど、批判する人も少なくない。けど、だんだんと、みんな、わしのまとめたような人間観でないと、世界は治まっていかんと思うようになる。わしの人間観でないといかんは言わんが、今までのような、人間は小さな存在とか、罪業深重の凡夫とか、そういう人間観ではあかんな。

当連載の関連書籍『ひとことの力』は好評発売中です。上の画像をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。

そういう人間に対する見方をしておったら、責任感も小さくていいということになる。まあ、学者の中には、人間もアリも犬も牛も、命において同じやと。それはそうやけど、そういうことを言っておったら、それなら、人間は、アリや犬や牛と同じ程度の責任でええのかということになるな。そういう考えは、お釈迦さんとかキリストさんが生きておったと時代では、そやろうな。その頃は、人間は、弱い存在や。粗末な生活をし、暮らしをしておったわけや。食べるにしても、ほかの動物と闘っとるわね。そうせんと食べれんわけや。互角やな。けど、だんだんと知恵を持った人間は、本来の知恵や力を発揮するようになってくる。そうなると、ほかの動物を飼育し、畑をつくり、それを食料にする。まあ、牛や豚も、今は狩りをするのではなく、牧畜でやっている。農業も同じことや。

次ページ「勝手気ままにやったら、結局、人間は自滅する」
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT