ホンダ「ビート」軽ミッドシップオープンの衝撃 5年間の生産、短命ながら今も乗り継がれる1台

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ちなみにビートの発売と同時期、1991年にスズキからはハードトップのオープンボディとFRレイアウトを採用した軽自動車「カプチーノ」、1992年にはマツダからガルウイングドアとミッドシップレイアウトを採用した軽自動車「オートザムAZ-1」が登場している。

それら3車種は、頭文字を取って「平成ABCトリオ」とも呼ばれるが、ターボエンジンを採用したカプチーノとオートザムAZ-1に対し、自然吸気エンジンを選んだビートという図式もホンダらしさを感じる。

筆者の愛車。1993年式で2年ほど前に手に入れた
筆者の愛車。1993年式で2年ほど前に手に入れた(筆者撮影)

ただ、カプチーノやAZ-1のターボカーに比べれば、自然吸気エンジンのビートはお世辞にも速いとはいいがたかった。実際に当時のジャーナリストや雑誌の評価もカプチーノが称賛された。ただ、現在ビートを所有している筆者は、ビートに速さを求めるのは野暮なことのように思う。

速さではない、楽しさ

“MIDSHIP AMUSEMENT”と記されたビートのロゴ
“MIDSHIP AMUSEMENT”と記されたビートのロゴ(筆者撮影)

ビートには、速さではない、楽しさがある。それは、ホンダ開発陣が『ミッドシップ・アミューズメント』と銘打ってビートを誕生させたことからもわかる。ホンダのスポーツカーと言えば、VTEC搭載車に代表される官能的な速さをイメージする人が多いだろう。

しかし、ビートが目指したのは、『理屈抜きで楽しく、街のコミューターになるようなクルマ』だ。ほかのホンダスポーツとは異なり、『速さよりも楽しさを優先』し、通勤や買い物などの“コミューター=移動手段”というカテゴリーの中で、運転する楽しさを追い求めた結果が『フルオープン2シーターミッドシップ』というカタチだった。

真上から見ると、コンパクトな2シーターであることが非常にわかりやすい
真上から見ると、コンパクトな2シーターであることが非常にわかりやすい(写真:本田技研工業)

事実、ホンダVTECスポーツはもちろん、ライバルのカプチーノに比べても速さでは劣る。しかし、8500回転まで爽快にまわるエンジンと、ミッドシップレイアウトによるキビキビとした挙動、そして誰でも扱い切れる性能は操る楽しさが詰まっている。

また発売当初は、前年にデビューしたNSX同様のミッドシップレイアウトというイメージ戦略に加え、138万8000円という手頃な価格から予約が殺到している。

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