JR各社の「保守革命」、作業ロボット開発の現在地 人型ロボは実用化目前、リニア新幹線向けも

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鉄道技術展では日本信号が実用モデルとして零式人機2.0をベースに開発中の「製品試作機」が屋外に展示された。この製品試作機は人型ロボットが「洋服」を着ているのが特徴的だ。「屋外作業を考慮した防水、防塵目的のための着用」と日本信号は説明し、「本品は試作機なので、製品版ではカラーやデザインも多少変わることとなる」という。

日本信号 ロボット 試作機
日本信号が開発中の製品試作機(記者撮影)

ここでは、樹木の伐採、ボルト締め、ブロックの組立作業などさまざまなデモンストレーションが実施された。JR西日本が営業線で実用化する際には、1台だけというわけにはいかない。日本信号の塚本英彦社長は「複数台を製造する」と話す。

1機あたりの価格についても検討項目だ。零式人機ver.2.0はアイデアやコンセプトが実現可能か、どの程度の効果が得られるかを検証するために開発された試作機であり、その製造費用については「開発のための費用もあり、いくらかかっているか想像もつかない」と人機一体の金岡博士社長は話す。製品試作機では、量産化が容易になるよう製造工程を工夫しているほか、製造コストの削減にも取り組んでいる。

JR西日本は「2024年度中の実用化・営業線への導入を目指す」としている。2022年4月時点では「2024年春の実用化・営業線での導入を目指す」としていたので、時期が少し後ろ倒しされたが、導入されれば鉄道の保守作業の現場を革命的に変えるインパクトを持つだけに、期日を急ぐあまり拙速は禁物。開発には万全を期してほしい。

日本信号 塚本英彦社長 ロボット
日本信号の塚本英彦社長(写真:日本信号)

JR東海はトンネル検査ロボ

2023年9月26日、JR東海は開発中のトンネル検査ロボットを愛知県小牧市にある同社の研究施設で報道公開した。敷地内に設置された長さ約10mの試験トンネルの中に、大型トラックが停められており、荷台にロボットが据え付けられている。零式人機のような人型ではないが、高所での作業を想定しているという点ではJR西日本と同じだ。

トンネル内の検査はコンクリート表面の目視検査に加え、検査員がハンマーで壁面を叩いて、打音により内部の状態を把握するという検査も行っている。高所での作業は危険を伴うほか、天井を叩くため腕を上げている必要があり、長時間の作業は身体的にもつらい。

トンネル内検査
トンネル内の検査は目視と打音検査で行っている(記者撮影)

そこで、JR東海はこの作業をロボットに代替させることを考えた。2015年から開発を始めて足かけ8年。6.5億円の費用を投じ、ようやく実用化が見えてきた。

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