ワールドが大量閉店、「再生請負人」に高い壁 アパレル名門、栄光の軌跡と失速後の展望

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上山社長は「固定費のスリム化にいっさい聖域は設けない」とし、2017年3月期には営業利益100億円超を目指す。だが目標を達成したとしても、リーマン前の収益水準にはまだ遠く及ばない。

リストラ後の成長戦略を描くうえで悩ましいのが優先株の配当負担だ。ワールドは2005年、MBO(経営陣による買収)で上場を廃止した際、優先株発行などにより資金を調達。買い入れ消却を進めるも、3月末時点でまだ8120万株が残っている。1株当たり配当金は2019年3月期まで8円だが、2020年3月期以降は18円にハネ上がる。

ネット注力も力不足?

今後は投資が少なくて済むインターネット販売に注力する。ただ現在のネット売上高は130億円と全体の4%にすぎず、業績を牽引するには力不足の感もある。また、主力ブランド「アンタイトル」をカジュアル化させるなどのテコ入れを行うが、イメージ刷新が浸透するまで急回復は見込めそうもない。

上山社長はこれまで複数社でトップを務め、会社更生法下にあった総合スーパー・長崎屋では、計画より12年早く更生手続きを終結させた。そんな“再生請負人”にとっても名門アパレルを復活させるのは簡単ではなさそうだ。

「週刊東洋経済」2015年6月13日号<8日発売>「核心リポート04」を転載)

藤尾 明彦 東洋経済 記者

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ふじお あきひこ / Akihiko Fujio

『週刊東洋経済』、『会社四季報オンライン』、『会社四季報』等の編集を経て、現在『東洋経済オンライン』編集部。健康オタクでランニングが趣味。心身統一合気道初段。

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