金融庁が損害保険大手4社に対し業務改善命令 企業・団体向け保険で保険料調整など違反行為

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金融庁は4社に対し、2024年1月末までに再発防止策をはじめとする業務改善計画の検討状況を中間報告させ、同2月末までに同計画の最終形を提出させることを求めている。

また、各社から独禁法違反の疑いのある取引をしたとして自主申告を受けた企業・団体数が現時点で576にも上ることから、金融庁として今後さらに個々の事案についても調査を進める方針だ。

金融庁は行政処分と並行して、カルテル事案の詳細な調査についても引き続き進める方針だ(記者撮影)

さらに経営責任の明確化についても求めている。その中で、金融庁が厳しく指摘したのが、歴代の経営陣によって醸成された「(独禁法などの)法令順守よりも自社の都合を優先する企業文化」である。

カルテル行為は、特定の部署や担当者によるものではなく、長期間にわたって業界全体の「悪弊」となっていた。その背景には、取引関係の維持を何よりも優先する歪んだ文化や組織風土があり、その是正が必要不可欠と金融庁は見ている。

損保のビジネスモデルそのものが問われている

カルテル問題をめぐっては、大手企業傘下の保険代理店が主導したケースもある。そのため、代理店経由が収入保険料の9割を占めるという損保業界のビジネスモデルそのものが、あり方を問われる事態にもなっている。

保険自由化から四半世紀。これまで温存させてきた事業構造や悪弊を、大手4社は断ち切ることができるのか。保険会社としての信頼を失ってしまった今、改革の手綱を今後緩めるようなことがあれば、大手といえども淘汰の波が容赦なく押し寄せることになる。

中村 正毅 東洋経済 記者

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なかむら まさき / Masaki Nakamura

これまで雑貨メーカー、ネット通販、ネット広告、自動車部品、地銀、第二地銀、協同組織金融機関、メガバンク、政府系金融機関、財務省、総務省、民生電機、生命保険、損害保険などを取材してきた。趣味はマラソンと読書。

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