「ニュース専用アプリの終わり」が始まった Instant Articlesのインパクトとは?

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「情報を摂取するためのツール」のスタンダード争いは、より激化する。情報が大量に、かつ高速に流通するプラットホームであるFacebookの中で記事が読まれるようになるインパクトは絶大だ。

多くのメディアは、これまで自前のアプリを用意し、そこで読者を囲い込もうとしてきた。この試みは完全に古いものになるだろう。さらに、過去2年ほどで急伸した「スマートニュース」や「グノシー」といったニュースとの出会いを演出するアプリや、記事を美しく表示してきたFlipboardやFeedlyといったアプリは、「余計なもの」となってしまう可能性がある。

いま急伸しているキュレーションメディアは巨大な記事リンク集のようなものであり、独自のクリエイティブを提案できているわけではない。それに対しFacebookでの記事の見せ方は、モバイルにふさわしい新たな表現力を組み合わせることが可能だ。

Instant Articlesは、ユーザーがFacebookアプリを開いている時間を延ばし、またユーザーが友人から教えられた情報を、より快適に読む事ができる環境を与えることになる。MessengerやInstagramなど、優秀な自社のモバイルアプリに対して、「Facebook」というのアプリの存在意義を際立たせることもできるだろう。

Googleも独自のニュース配信へ

また、現在はニュースに関してお世辞にも上手く取り組んでいるとは言えないGoogleも、見逃すことはできない。Google I/Oで見せた機械学習による「ユーザーの欲しいもの」を選り抜く知能が、いつニュースの分野に向くとも限らない。

友人が薦めるニュースか、自分が見るべきニュースか。どのような表現なのか。モバイルを取り巻く情報摂取の競争は、より激化していくことになるだろう。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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