原発「安価」神話のウソ、強弁と楽観で作り上げた虚構、今や経済合理性はゼロ
しかも、11兆円というのは、工場稼働率100%を前提にしているのだから楽観的というほかない。実際は、フランス・アレバのラ・アーグ工場が稼働率56%、英国セラフィールド工場は4%にとどまる(各07年)。歩留まりが下がれば、反比例してコストはかさむ。ひいき目に見て稼働率70%としても、22兆+11兆=33兆円の処理費用は47兆円に膨らむと考えてもおかしくはない。
高レベル放射性廃棄物の処分に関する費用に至っては、国の見積もりは決定的に「甘い」。高レベル廃棄物というのは、使用済み燃料を再処理する際に出る液体状の廃棄物で、安定した物質であるガラスを混ぜて「固化体」にされる。固化体は、30~50年かけて冷まされた後(中間貯蔵)、地下300メートルより深い地層に最終処分される。政府は、固化体1本のコストを3530万円として、2兆円余りとはじいている。
ところが、である。高レベル廃棄物は、過去、フランスや英国に固化を委託してきた。固化を終え返還された燃料は、現在は六ヶ所村で中間貯蔵されている。大島教授はこれについても、電気事業連合会の資料から検証した。結果、1本の貯蔵費用は1億2300万円程度と、政府前提の3・5倍にも達することがわかった。
「地下に埋めて半永久的に人類から隔離する費用が、当座の管理費用より安いとは考えにくい。少なくとも同じと見るべきだろう」と語る。高レベル廃棄物もほかと同様、全量再処理ベースで計算すると、(2・55兆円×2)×3・5=約17・8兆円。これは、国試算ベースの7倍に相当する。“真”のバックエンド費用は約74兆円──。金額の当否はともかく、国の見積もりはあまりに楽観的だ。
再生可能エネルギーが将来いちばん安くなる
最後に、第3のコスト。発電所の建設を受け入れた地元自治体には、見返りとして、多額の交付金や補助金が流れる。これも、発電コストにほかならない。
再び大島教授の試算によると、1キロワット時当たりの開発単価と立地単価の合計は揚水を含む原子力が2・1円、火力と水力が各0・1円(1970~2007年度)だった。これを足した同期間の「総コスト」は、揚水を含む原子力が12・23円、火力9・9円、水力3・98円となった。原子力発電は、最も割高な発電だったことになる。神話は虚構だった。