阪急「指定席車」迎え撃つ京阪プレミアムカー戦略 大阪と京都を結ぶ鉄道大動脈に強敵が出現

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客室内は大阪向き進行方向左側が1人掛け、右側が2人掛けで、大柄なリクライニングシートが配されている。座席と室内全体がともに黒とホワイトベージュのコンビネーションで、見た目も肌触りも“品”がある。京阪のHPによると「漆黒色」「生なり色」と称する。座席肩の掴み手、黒革の枕カバーに浮き立つPREMIUM CARの文字、深いヘッドレストの側に配された京阪特急の鳩マークと三ツ星を組み合わせたシンボルマーク……、いずれも金色である。

座席部の床は掃き清めた石庭をモチーフに波紋を描いたカーペットを敷き、足裏の感触がよい。いわばJRの特急グリーン車だが、幾度乗ってもそれ以上のグレードに感じ入る。

なお、8000系での運転開始時はアテンダントに頼むと毛布や携帯充電器を貸してくれるサービスもあったが、接触を回避する対策として休止され、2023年5月に正式に終了が発表された。さらにコロナ禍は、専任アテンダントを張り付ける人的にも京阪史上画期的なサービスであるプレミアムカーの営業自体を相当な苦境に追い込んだ。現在はおそらく旧に復したようで何よりである。それと、以前は男性アテンダントは少なかったようだが、今回は相当の頻度で見かけた。その点も時代の変化かもしれない。

ふと窓上のステッカーに目を止めると、「ナノイーX」の搭載を示していた。特段の表示は、パナソニックが京阪沿線を代表する企業としての関係性であるのかもしれない。

プレミアムカーに着席して「生なり色」の背面を眺めると、見るからに手触りのよさそうな品格ある生地。網ポケットには SANZEN-HIROBAの案内(写真:松本洋一)

JRAの京都競馬場を見ると淀を通過、ほどなく木津川と宇治川を渡って大阪府に入る。川を挟んだ平地がぐっと狭まり、JRや阪急京都線が走る対岸に天王山を望む。このころ、アテンダントはプレミアムカーグッズの販売を案内。座席生地や、枕カバーと同じ革を使った財布、ケース、車内の車号銘板と同デザインのキーホルダーがそろえられ、いずれもそれなりのお値段で、グレードが高い。

中計にプレミアムカー増備 3000系で実施か

2023年3月末に京阪ホールディングスが発表した京阪グループ長期経営戦略・中期経営計画「BIOSTYLE~深化と挑戦~」における2025年度までの運輸業の事業戦略を見ると、その中の一つに「プレミアムカーの増備」が記載されている。

プレミアムカーの利用者数は、誕生初年の2017年度を100とした場合の指数が2019年度は200に達した。コロナ禍の2020年度は140以下に落ちたようだが、翌2021年度は3000系への連結があり220近くまで回復、さらに2022年度は300を突破するなど好調ぶりを続けている。そのために増車されるようだ。

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