貧乏な人が知らないお金との付き合い方「3原則」 手取りでもらったお金をこの3つに振り分けよ

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トライする前から「絶対に残らない」と確信を持っている人は、「2万円給与が減ったつもりでがんばってみよう」とあらかじめ枠を決めてしまう手もあります。そして、心に決めた「なくなってもいいお金」を先に手取りから引いてしまう。その残りの額から支出がはみ出ないよう、「来月はカフェ通いを3回我慢して1000円浮かせよう」「終電を逃してタクシーに乗り、2000円ムダ使いしたのが痛かった」「やっぱりこの計画には無理がある。来月は2万円でなく1万5000円で試してみよう」などと、ラン&テストを重ねるのです。そのなかで、自分の「なくなってもいいお金」の額を決めていきましょう。

ラン&テストの結果、「どうやら自分は2万円ぐらいならなくなっても大丈夫だ」と把握できたとします。この「なくなってもいい」2万円を、何に使うか。

「投資」に回すのです。たとえば投資信託や株式投資など、お金を殖やすことにチャレンジしても構いません。

しかし、ただ一口に「投資」と言っても、「お金への投資」に限る必要はありません。たとえば自分のために英語を習ってもよし。「うまくいく保証はないけれど、うまくいけばリターンがありそうだぞ」と思えることに使います。

英語教室に通った結果、希望の外資系企業に転職してステップアップできるという大きなリターンがあるかもしれない。けれど、英語を使う機会がない場合もあるかもしれない。

そういう「どっちに転ぶかわからない」要素が含まれるものは、「なくなっても生活に困らない額」の範囲内で使うのが「財産三分法」のセオリーです。

③流動性の高いお金=「預金」

財布に入れ、投資をしたら、残ったお金はすべて金融機関に「預金」します。

預金は、家賃や携帯料金、光熱費や生命保険料などの固定費を引き落とすためにも使われます。けれど、基本的には「財布を補充する」、そして「残ったお金を貯める(貯蓄する)」役割を担っています。

預金は「いつでも引き出せる」ことに価値がある

預金は、必要なときにいつでもお金(キャッシュ=現金)を引き出せること、つまり流動性にこそ、その本質的な価値があります。財布にお金を補充するときや突発的なアクシデントが起こったとき、お金を引き出すのに手間どってしまっては大変でしょう。ですから、預金は金利の比較的高い定期預金ではなく、普通預金からはじめるのが鉄則です。金融機関に預けるからといって、金利をアテにするものではないのです。といっても、いまの日本の金利水準だと、アテにするほど高くはありませんけどね。

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そうそう、「預金は流動性に価値がある」ということがわかっていたら、「日本の金融機関は金利がゼロに等しい。そのまま預金しておくのはもったいない。成長率の高いブラジル債を買いませんか?」といったセールスに引っかかることもなくなります。「このお金は、金利の高さではなく流動性が大事なんですよ」と言えますからね。

ブラジル債を買ってしまうと、急にお金が必要になったときに引き出せません。そもそも、「なくなってしまうリスクがあるものには『投資』のお金を使う」という「財産三分法」のセオリーにも反しています。

出口 治明 立命館アジア太平洋大学(APU)学長

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でぐち はるあき / Haruaki Deguchi

1948年、三重県生まれ。京都大学法学部卒業後、日本生命保険相互会社入社。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て2005年に同社を退職。2008年にライフネット生命を開業。2017年に代表取締役会長を退任後、2018年1月より現職。『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『人類5000年史Ⅰ』(ちくま新書)、『「全世界史」講義Ⅰ、Ⅱ』(新潮社)、『仕事に効く教養としての「世界史」Ⅰ、Ⅱ』(祥伝社)、『本の「使い方」1万冊を血肉にした方法』(角川oneテーマ)、『教養は児童書で学べ』(光文社新書)、『ゼロから学ぶ「日本史」講義Ⅰ』(文藝春秋)など著書多数。

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