「離婚秒読みの夫婦」向き合うプロの超納得の助言 元家裁の調査官がカウンセラーになって伝えること

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――家庭裁判所は夫婦や親族間の争いなどを調停や訴訟などによって解決したり、非行をした少年の処分を決定したりするところですよね。個人的にはなるべく関わりたくない組織です(笑)。調査官の仕事について簡単に教えてください。

家事事件と少年事件のうち、私は家事事件を主に扱ってきました。離婚に関する紛争など夫婦関係調整案件の場合、法律の専門家である裁判官1人と非常勤の調停委員2人が調停委員会というチームで進行を担います。心理や人間関係の専門家である調査官は、紛争性が高かったり精神疾患を抱えた当事者がいたりする難しい案件に関わる立場です。進行困難な一部のケースに関わり、夫婦それぞれの心情の背景を探ったり、話し合いで解決できるように働きかけたり、裁判官に判断材料を提供したりします。私の場合は月30件ぐらいの案件に同時並行で関与していました。

離婚裁判という手続きは最終段階です。その前に双方の話をもとにして話し合いを進めてもらいます。それぞれが納得し、裁判を経ずに合意するのがベストですから。

国民はもっと裁判所を利用していい

日本の離婚の9割は裁判所を介さない「協議離婚」ですが、次に多いのは調停委員を活用する「調停離婚」です。もちろん、話し合いの結果として離婚せずに済む場合もあります。調停ができずに「裁判離婚」に至るケースはごくわずかです。

夫婦関係調整に限らず、調停の申し立てにかかる費用は1000円強です。連絡のための切手代も含めても2000~3000円で利用できます。調停はあくまで話し合いですから、できるだけ和やかな雰囲気で行われるのが前提です。国民はもっと裁判所を利用していいと私は思います。

――松本さんはなぜ家庭裁判所を退職してカウンセラーとして独立したのですか。

調査官としてさまざまな家庭の問題に関わり、場合によっては解決のお手伝いもできる仕事にはやりがいを感じていました。しかし、キャリアを重ねるにつれて管理職としての業務も増え、自分がやりたいことと少しずつズレていったのです。調査官の同期である夫とも何度も話し合い、私のほうはカウンセラーとして独立することにしました。調査官は全国転勤なので、2児の母親として家庭との両立に悩むことが多かったのもきっかけの一つです。

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