岸田首相、安倍派一掃でも変えられない派閥政治 「死人に口なし」で捜査の標的は歴代事務総長に

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今回の交代人事の最大の注目点は、岸田政権発足以来、岸田首相の女房役で政権の要となる官房長官を務めてきた松野氏の後任選びだった。最終的に岸田派の座長として同派を取り仕切る立場の林氏の起用で落着したが、「茂木派や無派閥の有力者にも打診したが固辞されたため、当初は官房長官就任を渋っていた林氏を口説き落とすという紆余曲折の果ての人事だった」(岸田派幹部)とされる。

林氏は官房長官就任が内定した14日朝に記者団に対し「『青天のへきれき』という言葉がふさわしいが、岸田総理から『厳しい状況の中だが、支えてもらえないか』と言われた(ので応諾した)。持てる力を発揮できるよう誠心誠意、努力したい」と語ったがその表情や口ぶりには複雑な心境が隠せなかった。

麻生氏らへの配慮と忖度がにじむ後任人事

また、林氏とともに安倍派4閣僚の後任となった3氏をみても、総務相となった松本氏は麻生太郎副総裁の率いる麻生派の大幹部で、岸田首相の麻生氏への配慮がにじむ。経産相に起用された斎藤氏は、通産官僚出身という経歴が買われたとされるが、将来の岸田派入会が取り沙汰されている人物だ。また、新農相の坂本氏は農林族の大物でもある森山総務会長の側近で、党で政権を支える森山氏の意向を忖度したとみられている。

その一方で、党執行部からも、安倍派5人衆の萩生田光一政調会長、高木毅国対委員長、世耕弘成参院幹事長の交代が決まっている。閣僚交代人事と並行して萩生田氏ら3氏がそれぞれ、岸田首相や茂木敏充幹事長に辞意表明したからだ。ただ、岸田首相は自民総裁として「政府与党の最優先課題となる2024年度予算案の決定までは職にとどまってほしい」と要請、3氏も受け入れる意向とされる。

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