増えるシニア婚活、60代で入会した男女3人の結末 「老後は2人で、でも手を握られるのは嫌」の現実

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「90歳を超えている父の年金は、私たちが65からもらう年金とは比べものにならないくらい高額なんです。父が生きている限りは、私のお金は生活のためではなく、自分の趣味ややりたいことに使えます」

では、なぜ婚活を始めようと思ったのか。よりこは初婚者なのだが、ある日の出来事が起因する。

女友達と待ち合わせをして映画を見に行った。終えて、お茶をしていると、近所付き合いをしている隣人から電話が入った。

「お父さんが庭で転んで、病院に運ばれたわ」

お茶を切り上げて慌てて駆けつけると、足の付け根を骨折した父が病院のベッドに横たわっていた。

「横たわる姿が枯れ木のようで、老いを実感しました。先はそんなに長くないだろうと。もし父がいなくなったときに、私はひとりぼっちになってしまう。そして私も歳をとって年々老いていく。身寄りは弟だけ。弟家族のお荷物になるのは嫌だなって」

それならば、一緒に歳を重ねていけるパートナーを探そうと思ったそうだ。そして、婚活をスタートさせることを決意した。

10年前の婚活市場とは違い、今はシニアの登録者も多い。60代でもお見合いはいくらでも組める状況だ。いくつかのお見合いをし、断ったり断られたりが続いていたのだが、その中でも交際に入ったしょうじろう(65歳、仮名)とは気が合ったようだ。

待ち構えている「アノ問題」

3回、4回とデートを重ねていくうちに、真剣交際が見えてきていた。

ところが、あるときこんな相談が来た。

「前々から気になっていたのですが、しょうじろうさん、何かにつけて私の体に触れてこようとするんですよ。この間は手をつながれて。しばらくはつながれたままにしていたんですが、途中で美味しそうなお菓子があったのでお土産に買って、それをしょうじろうさん側の手に持って、手がつなげないようにしました」

そこで、筆者は言った。「これから結婚しようという男性と手をつなぐのが嫌だったら、1つ屋根の下では暮らせないのではないですか?」。

すると、よりこが言った。「この歳になったら、そんなベタベタするのって、気持ち悪いし、恥ずかしいじゃないですか。お茶のみ友達みたいな関係で、皆さん結婚していくのではないですか?」。

これは、よりこだけではなくアラカン女性たちからよく聞く言葉だ。ただ男性たちは、いくつになっても女性と触れ合いたいと思っている。

この世代になると、男女の性的欲求には差が出てくるようだ。性交を伴う関係においても、60代の男性では53%、70代の男性では25%がそれを求めている。ところが、女性の場合は60代が20%、70代が10%と、男女で大きな開きがある(日本性科学会、2000年調査より)。

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