日本生命、介護の「ニチイ」買収で描く成長戦略 本命の「海外大型買収」には慎重な姿勢が続く

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国内大手生保の中で、日本生命だけが北米地域での大型買収に乗り遅れ、いまだ2兆円の戦略投資枠を持て余している状態にある。

そのことが第一生命グループにトップライン(保険料等収入)競争で一時的に後塵を拝した一因にもなっており、買収の可能性を常に探っている海外部門には焦りが大きい。

2兆円前後の大型買収案件に食いつく

米AIG傘下の上場生保、米コアブリッジ・ファイナンシャルなど投資銀行から持ち込まれる2兆円前後の大型買収案件についても、日本生命の海外部門はすぐに食いつき、議論の俎上に載せようとする。しかし、足元の円安環境や買収後の統治の実効性などを冷静に見る企画部門との温度差が大きく、いまだ本格的な検討には至っていない。

折しも日本生命は、2024年度からの中期経営計画を策定している真っ最中だが、新中計でも海外部門の強化については具体性に乏しいものになりそうだ。かろうじて実現する可能性が高い選択肢は、すでに持ち分法適用となっている米レゾリューションライフへの「さらなる出資と子会社化ぐらいかもしれない」(日本生命役員)との声が漏れる。

北米地域での大型買収が遠のくような状況で、新中計の柱として清水博社長をはじめ経営陣の視線がニチイに集中していったようだ。

業界の盟主として、また相互会社として日本生命がどのような国内外の成長戦略を示し、契約者利益の最大化につなげていくのか。2024年3月に発表予定の新中計に注目が集まる。

中村 正毅 東洋経済 記者

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なかむら まさき / Masaki Nakamura

これまで雑貨メーカー、ネット通販、ネット広告、自動車部品、地銀、第二地銀、協同組織金融機関、メガバンク、政府系金融機関、財務省、総務省、民生電機、生命保険、損害保険などを取材してきた。趣味はマラソンと読書。

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