「食べ過ぎ」年末年始に見直したい"食べること" 「命をいただく」から決して粗末に扱わない

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曹洞宗を開いた道元禅師は、食に関する著書『典座教訓』の中で、「素材は余すことなく使わなくてはいけない」と書いています。私たちが食べるものはすべてが命だから、けっして粗末に扱ってはいけないということです。

たとえば大根なら、むいた皮はきんぴらにし、葉は漬物やみそ汁にして食べます。しっぽや首のかたい部分も一度干せばよいだしが出ます。生き物の命をいただくわけですから、どんな切れ端でもムダにはせず調理することが精進料理の考え方の基本なのです。

「いただきます」と感謝

もちろん大量に作って余らせることもありません。自分が食べられる量と向き合って、食べきれるぶんだけを料理するのです。

「食材も料理もお金を払って買ったもの。残そうが捨てようが、文句を言われる筋合いはない」と考える人もいるかもしれませんね。

けれどそれは、スーパーやレストランに支払った代金の話にすぎません。命に対する責任は果たしていないのです。

私たちが命をつなぐために食べている食材は、すべて命あるものたちです。その命については、私たちは何の対価も支払ってはいません。

何ができるのかといえば、せめて両手を合わせて「いただきます」と感謝し、ひと口ひと口を味わい、残さず食べきる。それだけなのではないでしょうか。

一禅チャレンジ「食べられる量を知る」
ひと粒のお米も、私たちの食卓に運ばれてくるまでに100人の手がかかっているといわれます。丹精こめて育てた人、刈り取った人、脱穀や精米をした人、袋に詰めて運んだ人、問屋さんや小売店の人、もちろん家で調理してくれた人もいます。
その人たちの姿は見えませんが、そのすべてに感謝する気持ちを「おかげさま」というのです。そう考えると、ひと粒の米であっても食べ残すことはあり得ませんよね。
日々の食材をしっかり食べきるためには、自分が食べられる量と向き合うことが大切です。買い物のとき、調理のときに「この程度なら食べられそう」と思える量を意識したいものです。
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枡野 俊明 「禅の庭」庭園デザイナー、僧侶

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ますの しゅんみょう / Shunmyo Masuno

1953年、神奈川県生まれ。大学卒業後、大本山總持寺で修行。禅の思想と日本の伝統文化に根ざした「禅の庭」の創作活動を行い、国内外から高い評価を得る。芸術選奨文部大臣(当時)新人賞を庭園デザイナーとして初受賞。ドイツ連邦共和国功労勲章功労十字小綬章を受章。2006年、『ニューズウィーク』誌日本版にて「世界が尊敬する日本人100人」に選出。主な作品はカナダ大使館庭園、セルリアンタワー東急ホテル庭園「閑坐庭」、ベルリン日本庭園「融水苑」など多数。曹洞宗徳雄山建功寺住職、多摩美術大学環境デザイン学科教授。著書に『心配事の9割は起こらない』『仕事も人間関係もうまくいく放っておく力』(以上、三笠書房)など。

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