《日本激震!私の提言》復興は持続可能性を考え「スマートシュリンク」で--林良嗣・名古屋大学教授

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《日本激震!私の提言》復興は持続可能性を考え「スマートシュリンク」で--林良嗣・名古屋大学教授

--今回の大震災での救援・避難態勢をどう評価しますか。

今回、一般車両を高速道路に入れず、まず緊急車両の通路を確保したこと、また国土交通省東北地方整備局が津波に襲われる寸前の仙台空港からヘリを離陸させ、地震の被災状況と津波を上空から俯瞰的に把握した初動は、特筆に値する。

一方で、かなりの被災者が被災地に残ってしまい、クオリティ・オブ・ライフ(QOL、生活の質)が著しく低下し、生存条件すら脅かされる状況になってから避難したという悪いパターンに陥ってしまった。

大災害直後の対策の基本は、被災者を被災地に残さない事だ。地震や津波で途絶した道路網で、何度も水、食料、医薬品を運搬するよりも、被災者を被災地外へ一度だけ輸送するほうが容易だろう。飲食もでき、電気もトイレも正常に使える、安全で衛生的な地域へ、早く一時撤退させることだ。そして、被災地が復旧・復興したら、必要に応じて段階的に帰還する。これは、「生存条件確保と復活のための一時撤退」だ。

自然に寄り添う姿勢へ 復旧計画180度転換を

たまたま自宅が損壊しなかった人は自宅にいてもよいと考えがちだが、これはいけない。交通網が寸断されているときに、個別に物資の供給が必要になると、救援部隊に大変な負荷がかかる。平常時と異なる緊急時に、市民全員に必要なサービスを素早く提供するためには、一時的な撤退が必要だということを、日頃の防災知識の普及段階で、理解してもらっておく必要がある。

災害発生後、ただちに緊急システムに切り替えられるように、事前に準備しておくべきだった。全国の知事会や市長会が避難民の受け入れを表明したことは重要なカギであり、私自身も地震直後に提案した。これも事前に話し合っておき、すぐに実行できることが望ましい。

--次に来る復旧段階では、どんなことが問題になりますか。

一時撤退によって、被災者の生存条件を確保しておけば、冷静に復旧と復興を考えることができる。

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