会社の「実質強制ボランティア」を断る4つの方法 大阪府・大阪市「優勝パレード」から見る問題点

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大阪府や大阪市の職員は地方公務員に該当しますが、一部の条項を除き、地方公務員にも労働基準法は適用されます。1日8時間1週40時間の労働時間規制や、時間外労働・休日労働に対する割増賃金の支払いも、地方公務員には適用があります。

そうしますと、今回のボランティア活動が、実態として業務命令と同視されるような形で行われたものであったとしたら、無償で時間外労働を求めたことは、労働基準法違反に該当する可能性があります。

たとえ地方自治法等による財政規制に違反しないための理由であっても、労働基準法違反を正当化することはできません。

この点、報道されているところによると、大阪府市を合わせて3000人のボランティアを集めると目標人数を設定したり、ボランティアの募集が職制を通じて行われ、上長からの意思確認もあったとのことで、状況を総合勘案すると、純粋なボランティアではなく、法的には「業務性あり」と判断するのが妥当でしょう。

いずれにしても、大阪府や大阪市の職員が、労働基準法に違反してボランティアという名目の無償労働をすることは、回避すべきであるというのが、労働法の専門家である筆者の視点からの意見です。

会社の清掃活動やお祭り参加のボランティアは?

今回は、公務員のボランティアの事例でしたが、民間企業においても、同様の事案は少なからず発生します。

例えば、会社が、地域の清掃活動や、お祭りなどへの参加を「ボランティア」として社員に命ずる場合が考えられるでしょう。

このようなとき、たとえ「ボランティア」という名目であったとしても、事業主や上司から「参加をしてください」と明確に命令された場合は、間違いなく「業務」扱いになります。

明確な命令ではなくとも、参加をしないと人事考課にマイナスの影響を与える場合や、職制による圧力で事実上断ることが困難な場合も「業務」扱いと考えるのが妥当です。

とはいえ、社内の人間関係や「居心地」などのことを考えると、上司から参加を事実上強制されている状況の中で、「ボランティアであるならば辞退します」とか「業務扱いにならないなら参加しません」などと、正面から断ることができる人は少ないと思います。

そのようなとき、どうすればよいかですが、以下4つの対応が考えられます。

第1は、社内の人事部やコンプライアンス部門への相談です。ボランティアを強制しているのが会社ぐるみではなく、所属部署の方針や、直属の上司の考え方によるものであれば、社内的な相談により円満に解決できる可能性があります。

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