「網膜剥離」片目がなっていても気づきにくい理由 世界的眼科医が語る「見えなくなっても治せる方法」

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しかし、多くの日本の病院での手術は未だにシリコンバンドを巻くバックリング手術を行っていて、このバックリング法では、シリコンで眼球の中央の赤道部分を締めつけるので、網膜の端である鋸状縁の裂孔を押さえることはできません。いまや、バックリング法は先進国ではほぼ行われなくなっている方法です。

外傷による網膜剥離は、私も参加した医療チームがドイツで完成した近代的な小切開硝子体手術で完全に治せます。

早期発見が大切! 網膜剥離に早く気づいて

男性に多いのですが、網膜剥離になっているのに気づかないで半年以上、放置している人が結構います。女性はお化粧などの際に、片目をつぶって見るため、目の変化に気づく場合が多いのです。

男性は普段両眼で見ているので、片目が網膜剥離になっていても気づかない。1年以上放置していたと思われる網膜剥離で、強い増殖膜変化があることも少なくありません。

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聞くと、「何か変だ」と感じてはいたものの、両目で見ていると気づかなかったと言います。このような長期にわたり網膜剥離になっていたケースの網膜は全体に増殖膜が張っています。とくに網膜下増殖膜があると網膜が浮き上がってしまい、単純な網膜復位術では網膜はつきません。ですから網膜に小さな穴をあけて、網膜下の増殖膜を外に引っ張り出さなければなりません。とても難しい手術です。

しかしそのような難しい手術も深作眼科では日常茶飯事。たとえ多くの病院で手の施しようがないと言われても、あきらめないでください。少しでも早ければ治るかもしれないのです。私は、手術に当たっては、悪いところをロジカルに治すことだけを考えます。とはいえ、できるだけ早く気づいて、難しい状態になる前に来ていただきたい。それが何より患者さん自身のためなのです。

そして拙著『100年視力』でも詳しく解説している両眼視野チェック(画像参照)を習慣にして早期発見を心がけてください。

(外部配信先では両眼視野チェックの具体例などを示した画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

深作 秀春 眼科専門医、深作眼科院長

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ふかさく ひではる / Hideharu Fukasaku

神奈川県横浜市生まれ。米・独で研鑽を積み、白内障や緑内障などの近代的手術法を次々と開発。米国眼科学会理事を務め、眼科殿堂選考委員、学術賞審査委員などを歴任。それまで不可能とされた眼病の新しい治療法の開発や多くの革新的眼科手術法の開発により、国際眼科学会最高賞を20回受賞。2017年には、世界最高の眼科外科医に贈られる「クリチンガー・アワード」の欧米以外の医師では初めての受賞者となった。現在は世界最高のスーパードクターとして25万件の手術実績を有し、日本中だけでなく世界中から患者が治療を求めて来院する。他方でプロ芸術家でもあり多摩美術大学大学院を修了し日本美術家連合会員という画家としての一面も。

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