病気の日本近代史 秦郁彦著

病気の日本近代史 秦郁彦著

政治史・軍事史の専門家が新たな分野に挑戦した心意気が全編にあふれる。章のタイトル順に「黎明期の外科手術」「脚気論争と森鴎外」「伝染病との戦い」「結核との長期戦」「戦病の大量死とマラリア」「狂聖たちの列伝」「肺ガンとタバコ」と重いテーマが並ぶが、豊富な資料・データに歴史探索と推理が溶け合い興味深い医学史が生まれた。病気を扱っていながら重苦しさや晦渋(かいじゅう)から遠いのは、専門書でない強みと巧まざるユーモアのおかげだろう。

餓死を含む戦病死が戦死の6倍にも達した大東亜戦争、脚気をめぐる軍と医学者の混乱(森鴎外は最後まで脚気菌にこだわった)、不治の病・結核に取りつかれた薄幸の美女たち、「精神病の国宝的人物」と呼ばれた「芦原将軍」の言動など、医学者や医師の苦闘、患者たちの思いがさまざまに行間から伝わってくる。単なる歴史上の話で終わらず現代へとつながるところもよく、何より豊富な実話とエピソードが楽しめる。(純)

文芸春秋 1850円

  

関連記事
トピックボードAD
人気連載
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
0/400

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • いいね!

※過去48時間以内の記事が対象

※過去1ヵ月以内の記事が対象

※過去1ヵ月以内の記事が対象

※過去1ヵ月以内の記事が対象

※週間いいね数のランキングです。

トレンドウォッチAD
半導体の覇者<br>熱狂する世界、沈む日本

今やアップル、グーグルも半導体メーカー。半導体関連株はITバブルに迫る高水準。トップ10にアジア勢が並ぶが、日本は事業売却に揺れる東芝のみ。勢力図激変の業界をリポート。