【産業天気図・損害保険】自然災害少なく足元の業績は好転。ただ2極化進展へ

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損保業界は2極化の様相を見せつつある。前期は上陸台風が観測史上最多の10個に達し、集中豪雨など自然災害が多発したことで、全社が収益を圧迫されたが、今期はそうした自然災害に対する保険金支払いが平準化。その結果、三井住友海上火災保険<8752.東証>とニッセイ同和損害保険<8759.東証>は早々に期初の業績計画を増額した。この2社に加えミレアホールディングス<8766.東証>、損保ジャパン<8755.東証>、あいおい損害保険<8761.東証>も回復色を鮮明にしている。
 それに対し、日本興亜損害保険<8754.東証>、富士火災海上保険<8763.東証>、日新火災<8757.東証>の業績改善のスピードは緩慢だ。その最大の違いは、主力の自動車保険の動向にある。回復組は新商品の投入が効き、単価が底入れ基調にある一方で、出遅れ組は依然苦戦が続いている。今後は、自然災害に備えるために異常危険準備金に対して導入された新ルールも企業間格差を広げそうだ。それは戦後最大の被害をもたらした伊勢湾台風規模の被害にも対応できる支払い準備金を積むことを求めるものだが、ここではミレアとニッセイ同和の財務基盤の厚さが目立つ。
 損保業界は国内市場が成熟化しつつあり、医療保険など第3分野や生保子会社の育成とともに、BRICs市場を中心にした海外展開を進める必要に迫られている。いずれの点でも現状、先行しているのはミレア、三井住友海上、損保ジャパンの大手3社。そして中堅以下にトヨタ、日本生命と、それぞれ連携を深めるあいおいとニッセイ同和が控えているが、自然災害が再び多発するような事態が起きた際には、出遅れ組の日本興亜、富士火災、日新火災も巻き込み、もう一段の再編を予想する声が強い。
【岡本享記者】


(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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