社長は税理士!型破り鉄道模型会社の快進撃 SCに続々出店「ポポンデッタ」

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現在の秋葉原店は地下1階・地上5階のビルだが、当初の店舗は築50年の木造2階建て。2階には数人が同時に列車を走らせることのできる大型のジオラマを設置した。「景色の中を列車が走るのを見せることで、鉄道模型の楽しさがもっと伝わるのでは」との想いからだ。現在、各店舗には利用者が有料で車両を走らせることのできる大型のジオラマが設置されているが、その原点といえる。

当時の太田さんの夢は「ビルひとつに鉄道模型や鉄道の趣味がいっぱい入っていて、家族で来て楽しんでもらえる店」、つまり鉄道趣味の「ワンストップショップ」を作ること、そして、そのような店舗を関西や中部など各地方に1店ずつ作ることだった。前者はのちに秋葉原店のリニューアルで実現し、後者の夢はやがて現実が追い越していくことになる。

「各地方に1店舗」の夢に向け、まず目指したのは大阪だった。2005年11月に株式会社化ののち、2006年7月に大阪の電気街として知られる日本橋に店をオープンした。

周囲の大反対を押し切り出店へ

しかし「各地方に1店舗」の夢は難航した。次の出店先として検討した名古屋や博多の家賃が予想外に高かったのだ。「これには困りました。もうお店を出せないんじゃないかと思ってしまって」。

だが、突破口は意外なところにあった。ある日彼女と出掛けた、とあるショッピングモールだ。退屈しながら買い物に付き合っていると、彼女から「邪魔だからどこかで待ってて」と言われてしまった。しかし行く場所もない――。その時太田さんはひらめいた。「こういうモールにうちの店があれば、男性や子どもを惹き付けることができ、その間に女性は自由に買い物ができる。これは商業施設にとってもいいことではないか」。

早速ネットで商業施設のテナント募集を調べ、見つけたモール運営企業にメールを送った。話し合いの結果、「ここなら希望の条件で貸せる」と提案されたのは、埼玉県川口市の「川口グリーンシティ(現イオンモール川口)」別館の駐車場の一角にあった倉庫だった。本館からは離れた場所で、通路もつながっていない。

太田さんが社内にこの話を持ち帰ると「そんなところに出しても、誰も来ない」と大反対を受けた。だが、太田さんには自信があった。ひとつは、秋葉原店や渋谷店も決してよい立地ではないものの多くの人に支持された点。もうひとつは、ビルのワンフロアではない路面店の実験店として一時期開いていた東武東上線下赤塚駅前(板橋区)の店舗で、通行人を引きつけることにそれなりの感触を得ていた点だ。「ここで結果を出さずして次はない」という覚悟もあった。

社内の反対を押し切り、川口グリーンシティの店舗は2007年6月にオープン。結果は想定を大きく上回り、すぐに当時同モールを運営していた「ダイヤモンドシティ」が愛知県一宮市で運営する「キリオ(現イオンモール木曽川)」から出店の打診を受け、同年10月には同モールにも店舗をオープンした。

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